「ラジエーションハウス」は今までの医療ドラマになかった「放射線技師」「放射線診断医」に注目したドラマです。
患者数や医療の発展により増大した医師の負担を軽減するべく、「放射線技師」「臨床検査技師」「臨床工学技士」さんなど、それぞれの分野に特化した技師さんへのウエイトも大きくなっています。
今回は、「ラジエーションハウスⅡ」各回のあらすじを振り返りながら、登場する病名や用語などを解説します。
ぜひ最後までご覧ください!
「ラジエーションハウスⅡ」~放射線科の診断レポート~
基本情報
放送日 | 2021年10月4日~12月13日 |
原作 | 『ラジエーションハウス』 (原作:横幕智裕 漫画:モリタイシ GJ/集英社) |
脚本 | 大北はるか |
音楽 | 服部隆之 |
主題歌 | MAN WITH A MISSION 『Remember Me』 (ソニー・ミュージックレコーズ) |
企画 | 中野利幸 |
プロデューサー | 草ヶ谷大輔 |
演出 | 鈴木雅之、相沢秀幸、水戸祐介 |
スーパーバイザー | 五月女康作(福島県立医科大学) |
医療監修 | 齋田司(筑波大学附属病院) |
監修 | 松本尚、原義明(日本医科大学) |
医療指導 | 日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター 山本昌督(医療法人 清友会) 星誠一郎(セコメディック病院) |
医療画像協力 | 福島県立医科大学 筑波大学附属病院 順天堂大学 |
ロケ地 | 指扇病院(埼玉県) 旧東鷺宮病院(埼玉県) 幕張国際研修センター ゆうあいクリニック(神奈川県) 他 |
ラジエーションハウスとは
ラジエーション(radiation)を直訳すると、「放射、放射物、放射線、放射形」ですが、医療現場での意味は「放射線」です。
それにハウス(House)をつけて「放射線に関わる人たちの家」ということになりますね。
ラジエーションハウスには、
- 放射線技師:レントゲン、CT、MRIなどを撮影する人
- 放射線診断医:撮影の指示を出したり放射線技師が撮影した画像を読影(どくえい)する人
がいます。
ラジハのメンバー
◆五十嵐 唯織(いがらし いおり) 窪田正孝
建前は放射線技師だが、放射線科医として医師免許を持っている
◆甘春 杏(あまかす あん) 本田翼
放射線科医師。五十嵐の幼なじみ
◆広瀬 裕乃(ひろせ ひろの) 広瀬アリス
放射線技師。ひそかに五十嵐に思いを寄せている
◆小野寺 俊夫(おのでら としお) 遠藤憲一
放射線技師長。仕事に対してのプライドが高く技術もピカイチ。ギャンブル好き
◆黒羽 たまき(くろはね たまき) 山口紗弥加
中堅放射線技師
◆悠木 倫(ゆうき りん) 矢野聖人
放射線技師。ややコミュ障なところがあるが医療器具に詳しい
◆軒下 吾郎(のきした ごろう) 浜野謙太
中堅放射線技師。医師を目指していたが挫折した。得意分野は脳のMRI
◆田中 福男(たなかふくお) 八嶋智人
新人放射線技師。真面目だが、ことなかれ主義でめんどくさいことは大嫌い
◆威能 圭(いのう けい) 丸山智巳
中堅放射線技師。得意分野はAi(死亡時画像診断)
あらすじと「病名・用語」
第1話 帰ってきた天才放射線技師!消えた仲間たちの行方…
2年間の留学を終えて、五十嵐(窪田正孝)が甘春総合病院に帰ってきたが、新院長灰島(高嶋政宏)の経営方針により、放射線の読影を全部外部に委託されていた。
当然、ラジエーションハウスの規模も縮小され、黒羽(山口紗弥加)、軒下(浜野謙太)、威能(丸山智己)、悠木(矢野聖人)はそれぞれ別の病院に転職し、甘春(本田翼)も読解の委託先に回されていた。
そんな中、小野寺技師長(遠藤憲一)に認知症の疑いがあることがわかるが、五十嵐の的確な診断により「ウェルニッケ脳症」であると判明した。
認知症とは、脳の病気や障害など様々な原因により認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態。
アルツハイマー型認知症は認知症の中で最も多く、脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程でおきるのに対し、血管性認知症は脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によっておきる
厚生労働省 みんなのメンタルヘルス
ウェルニッケ脳症はビタミンB1(チアミン)の不足により、脳の奥のほうの部位(脳幹部)に微小な出血が起こり、細かい眼の振るえ(眼振)が目の動きに制限が出る(眼球運動障害)、意識障害などの精神状態の変化、ふらつき(失調性歩行)といった様々な症状が急激に出現する
厚生労働省 e-ヘルスネット
また、バイオリニストの宝生(田中みな実)が演奏中に倒れてしまう。
この患者は本来院長の担当患者だが、なんとか押し切り五十嵐が検査に踏み切るも、病名は「ワレンブルグ症候群」という難病だった。
ワレンベルグ症候群とは、脳の「延髄」の特に外側部位に対して発症する神経疾患。動脈の解離に関連して発症することも多く、通常の脳梗塞と比較して若年層にも発症するのも特徴。
突然の頭痛やめまい、嘔吐、ふらつきから発症し、温痛感覚の低下や飲み込み、発声にも影響する。CT検査やMRI、MRA検査、嚥下造影検査などが有効。
メディカルノート
第2話 陸上界の天才少年の未来を救え!
五十嵐(窪田正孝)のもとに、陸上大会中に「てんかん発作」を起こして転倒し、頭を強打した12才の小学生が運ばれてきた。
その子は、昔陸上選手だった父親譲りの天才少年で、将来のオリンピック候補として期待されていたがいつも「てんかん発作」に怯えていた。
状態は予想以上に悪く外科手術も選択肢の一つとされたが、後遺症が残るリスクが高いため五十嵐はなんとか薬物療法でしのげないかと知恵をしぼるが・・・
「てんかん発作」とは、脳の異常な神経活動によって起こる発作を繰り返してしまう慢性的な脳の障害。
ただし、発作自体はさまざまな原因で起こりうるため、一回だけのてんかん発作では必ずしも「てんかん」とは診断されません。
発作の症状は異常な神経活動が起こる脳の部位や広さによってさまざまですが、患者さんごとにはほぼ一定で同じ発作が繰り返されることが多いです。
「札幌医科大学附属病院の最新医療」
第3話 野獣に恋した美女の隠し事
五十嵐(窪田正孝)は、辻村(鈴木伸之)が甘粕(本田翼)を美術館デートに誘ったと知り動揺していた。
辻村は、わざわざ五十嵐のもとを訪れて甘粕に思いを伝えたことを明かし、「僕の方が一歩リード」と告げる。
そんな矢先、外来患者の丸井耕吉(温水洋一)が激しくせき込んで倒れた。
五十嵐がすぐにレントゲン検査を行うと、喫煙歴50年という丸井の右下肺には腫瘤の影がはっきりと映っていた。
診断の結果は「肺放線菌症」。
「肺放線菌症」とは、口腔内や消化管に存在する菌により引き起こされる慢性呼吸器感染症で、胸部画像検査では肺がんに似た陰影がしばしば認められる。
20〜40歳台、男女比では3:1と男性に多く、主な基礎疾患として虫歯、歯周病などの口腔内病変や気管支拡張症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患、糖尿病が挙げられる。
亀田総合病院 呼吸器内科HP
第4話 これが私の幸せの形!
ラジエーションハウスに、たまき(山口紗弥加)の母・るり子(中田喜子)が突然訪ねて来た。
るり子は、いまだ独身のたまきを心配し結婚相談所のパンフレットを持ってきたのだ。
そんな中、堀田成美(臼田あさ美)が夫の誠司(忍成修吾)に付き添われて救急搬送されてくる。
夫は弁護士、二人の子宝に恵まれて育児に専念している、おまけに美男美女のカップルである成美を、軒下(浜野謙太)や田中(八嶋智人)たちは自分の人生と比較して、うらやましくて仕方がない。
腹痛を訴えていた成美のレントゲン写真を見た甘粕(本田翼)は便秘だと判断するが、五十嵐は患者の年齢や便秘の原因まで考慮し大腸検査をすすめるも・・・
大腸CT検査とは、大腸に炭酸ガスを注入し腸管を膨らませた状態でCT撮影を行い、3次元画像を作成し大腸の病気を診断する検査。
大腸内視鏡検査のように組織を採取したり治療をすることはできないが、大腸内視鏡(大腸カメラ)検査に比べ飲用する下剤量が少なく体への負担も少ないのが特徴。
ミッドタウンクリニック名駅
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)は、原因不明の便秘・腹痛などがあり、大腸の腫瘍や炎症など大腸内病変が疑われる時に行われる。
メリットは病変を直接観察でき、必要に応じて拡大や画像強調などの精査が可能で、さらには病変の細胞を採取して診断を確定できること。
具体的には、検査前までに下剤などで腸をきれいにしてから、先端に小型カメラ (CCD) またはレンズを内蔵した太さ1cm程の細長い管を肛門より挿入し十二指腸や大腸の内部を観察する。
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
第5話 リストラ危機と温泉旅行!
ラジエーションハウスの冷蔵庫が故障したため、技師長の小野寺(遠藤憲一)が院長に購入を求めるも、そんな経費は無いとつっぱねられる。
それどころか人員削減のために技師の中から一人リストラさせろ!とまで言われてしまう。
断固反対した小野寺は、交換条件として「プレミアム人間ドックの導入」を受け入れてしまうが、その事実は伏せてプレミアム人間ドックを運営する『帝光クリニック』の見学を提案する。
一泊二日で温泉付き高級旅館に行けると聞いて大喜びの技師たち。クジ引きの結果、五十嵐(窪田正孝)、甘粕(本田翼)、広瀬(広瀬アリス)、田中(八嶋智人)、そして小野寺の5名が帝光クリニックへ行くことになった。
ところがそこで一人の客が倒れ、心臓マッサージを施すが・・・
心臓マッサージ(胸骨圧迫)は、動かない心臓に代わって全身の臓器に血液を送り込み、臓器が酸素不足で働かなくなってしまうのを防ぐ重要な救命方法です。
倒れている人の胸の真ん中に手のかかとの部分を重ねてのせ、肘を伸ばしたまま真上から強く(胸が約5センチ程度沈むまで)押してください。
押した後には瞬時にその力を緩めますが、手が胸の真ん中から離れないよう、ずれないようにします。これを1分間に100~120回の速さで繰り返し続けます。
公益財団法人 日本心臓財団
▼ AED・心臓マッサージを楽しく学べるサスペンスゲーム(日本循環器学会)
AEDを押すタイミングは「どんぐりころころ?!」
やってみたけど意外と難しかった…
第6話 最強の敵襲来!失敗しないドクター敗れる!
甘春(本田翼)をめぐり、相変わらず五十嵐(窪田正孝)と辻村(鈴木伸之)の静かなバトルが続いていた。
そんな矢先、辻村が医療過誤で訴えられる。
半年前に辻村が緊急で処置をした70歳の老婆・曽根京子に「またテニスをしたい」と言われ、「適度な運動なら」と許可したものの、2週間前、曽根がテニスをしていた際に骨盤を骨折し寝たきり状態に。
家族が「辻村が十分な検査をせず骨粗しょう症を見逃した」と訴えたのだ。
その頃ラジエーションハウスでは、田中(八嶋智人)が男性患者のMRI検査を行っていたが、何を隠そうその患者こそ、辻村を医療過誤で訴えた原告の代理人であり、真相を究明するべく甘春病院に潜入していたのだった。
彼は、『エリートである医師は過ちを認めず、保身のためには隠ぺいにも手を染めるものだと』決めつけ、異常なほど医師を敵視していたがそれには理由があった。
辻村は一時は自分の過失を認めるも、五十嵐が行ったデュアルエナジーCTにより「悪性リンパ腫」が原因での骨折と判明。辻村の潔白は証明された。
MRI検査とは磁気共鳴画像撮影法のことで、正式には「Magnetic(磁気) Resonance (共鳴)Imaging(画像)」。
大きなトンネル型の装置に強力な磁場を発生させて、ある周波数の電波を照射すると、体の中の水素原子が移動しますが、一定時間経ってから照射を止めると、体内の水や脂肪など、電波によって移動していた組織が元の位置に戻ろうとします。
この時の細胞組織の動きを画像として取得し、その画像から脳梗塞などの異常を発見するのがMRI検査です。
CT検査と良く似ていますが、CT検査は、X線を用いて体の断層写真を撮影する検査方法です。正式には「Computed(コンピューター利用)Tomography(断層撮影)」。
人間ドックなび
デュアル エネルギーCTとは、2種類の異なるエネルギーを持つX線で撮影する方法です。従来のCTより高精度な物質弁別が可能となり臨床に有用なさまざまな解析画像を得ることができます。
低エネルギーレベルのX線画像は、コントラスト分解能が向上して造影効果が増強するため、投与する造影剤量が低減できます。現在、これまでのCTより3割減の造影剤量で撮影しており、とくに腎臓の機能が悪い患者さんに大変有用です。
一方、高エネルギーレベルの画像は、金属から出る余分な雑音が低減できるため、きれいな画像を得ることができます。
JA広島総合病院
悪性リンパ腫は白血球の中のリンパ球ががん化した悪性腫瘍で、リンパ節が腫れたり、腫瘤ができる病気です。
リンパ性白血病といって、白血病の中にもリンパ球ががん化した悪性腫瘍がありますが、悪性細胞が増える場所が主に血液や骨髄(骨の中にあって、血液を作る工場のようなもの)である点が、悪性リンパ腫と異なります。
新潟県立がんセンター新潟病院
第7話 仲間を襲う謎の激痛!大切な今を生きる
五十嵐(窪田正孝)のもとに甘春の父で、離島の小さな診療所で余生を過ごしている正一(佐戸井けん太)が尋ねてきた。
正一は五十嵐に1枚の写真を見せ自分はすい臓がんであると告げる。その画像を見る限りかなり進行しており外科手術も難しい状態だった。
その頃、今井陽一(戸塚純貴)が心筋梗塞を起こし緊急搬送された。
陽一は26歳という若さだったが、精巣ガンが全身に転移しており抗がん剤治療も効果がなかったため、現在は痛みを和らげる緩和ケアに切り替えていた。
その最中に、今度は悠木(矢野聖人)が激しい腰痛に襲われる。X線検査では原因がわからず、今井(戸塚純貴)のとなりのベットに入院することになった。
たまたまゴミ箱に捨てられていた大量のDNAサプリを見つけた五十嵐は、造影剤を用いたIVP検査を行うことを提案。
昼食時間も惜しむほど勉強熱心だった悠木は、栄養を大量のサプリで誤魔化していたため、サプリの食べ過ぎにより尿管結石を起こしていたのだった。
すい臓がんは膵臓にできるがんで、多くは膵管の細胞から発生します。しかし、がんが発生しても症状が出にくく早期の発見は簡単ではありません。
進行してくると、腹痛、食欲不振、腹部膨満感(おなかが張る感じ)、黄疸、腰や背中の痛みなどが起こります。その他、急な糖尿病の発症や悪化がみられることがあり、膵臓がんを見つけるきっかけになることもあります。
がん情報サービス
精巣がんは、精巣内の多分化能をもつ生殖細胞から発生する胚細胞腫であるため、胚形成の各段階に相当する多彩な組織像を認めます。
精巣がんになる割合は10万人に1人程度と稀ながんですが、20代から30代の男性に起きる固形がん(白血病などの血液腫瘍以外のがん)としては最多であり、比較的若い方に起きるがんです。
国立がん研究センター東病院
緩和ケアとは、がん患者とその家族が可能な限り質の高い治療・療養生活を送れるように、身体的症状の緩和や精神心理的な問題などへの援助が、終末期だけでなく、がんと診断された時からがん治療と同時に行われること
厚生労働省
IVP検査とは、静脈に造影剤を注射して造影剤が腎臓を通って腎盂、尿管、膀胱に流れていく様子をX線で数枚撮影する検査で、腎臓、尿管、膀胱の形、機能がわかります。
検査時間は約30分で癌や結石などの診断に有用です。
東京女子以下大学病院 腎臓病総合医療センター
尿管結石とは、腎臓から尿道までの通り道に結石ができる疾患のこと。
中年以降の男性や閉経後の女性に多く見られ、一生のうちに尿路結石になる確率は日本人で約10%といわれており、ありふれた疾患といえます。
突然の腰や下腹部痛で苦しみ、七転八倒しながら救急外来に駆け込むケースもしばしばあります。
ひまわり医院
第8話 美しき白髪の女子高生!病の真実と彼女の夢
裕乃(広瀬アリス)は、自分の頭皮に10円玉大に毛が抜けている部分を発見し激しいショックを受けていた。おそらく日頃のストレスが原因だろう。
そんな裕乃のもとへ、高校時代の担任だった熊田太志(おかやまはじめ)が、学校で具合が悪くなった生徒、花倉乃愛(吉川愛)に付き添って病院へやってきた。
乃愛(吉川愛)は痩せてはいたが下腹だけがポッコリと出ていて、それを手で隠すようにしていた。また、つけていたウィッグを外すと白髪交じりのグレーヘアだったのだ。
MRIなどの検査によると極度の貧血が見られ、骨密度も異常なまでに低下していると判明。おそらく白髪も過度なダイエットによる栄養不足が原因と思われた。
ラジハのメンバーたちは、「無理なダイエットが健康に与える影響」などという資料をつくって乃愛を説得するが、「アイドルになる」のが夢である乃愛は聞く耳をもたない。
自宅に戻ってもダイエットをやめる気配はなく、下腹のふくらみも改善されないまま再度病院にかつぎこまれる。
検査の結果、おなかのふくらみは実は「卵巣腫瘍」によるものだった。
卵巣腫瘍は、一般に腫瘍が小さい場合は無症状のことが多く、日常生活に支障を来すことは稀ですが、腫瘍が大きくなると、膀胱や直腸を圧迫し頻尿や便秘になったり、リンパ管の圧迫や静脈の還流障害により下肢のむくみなどを生じます。
卵巣腫瘍の約90%は良性で約10%が悪性とされていますが、画像診断のみでは良性か悪性かの区別が難しいこともあり、その場合は手術中に組織診断を行うこともあります。
公益社団法人 日本婦人科腫瘍学会
第9話 不幸な技師退職騒動で分裂危機!
五十嵐(窪田正孝)から言われた「僕がずっと心から尊敬している医者は、甘春先生・・・あなたですから」という言葉が忘れられない甘春(本田翼)。
甘春は、五十嵐が研究チームの一員だったピレス教授の研究室が『留学生募集』していることがずっと気になっている。
ある日、医療メーカーの営業マン山田福造(石井正則)が、技師長の小野寺(遠藤憲一)に造影剤の売り込みにやってきたが、そのやり取りを見ていた五十嵐は、「山田の左耳が聞こえづらくなっている」ことに気づく。
本人にも自覚があり目眩も起こしている様子。
MRI検査では難聴の原因は特定できなかったがCT画像をより詳細に再構築して読解した結果、難聴は過去の事故で、耳の中の「アブミ骨」が骨折していたのが原因と判明した。
鼓室内にある耳小骨の一つ。アブミ (鐙) の形をしていることからこの名がある。
「アブミ骨」は内耳に最も近く存在し、耳小骨の一つであるキヌタ骨やツチ骨とともに鼓膜からの振動を受けて内耳に伝えている。
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
第10話 小さな命を救え!閉鎖した肺動脈弁を開通せよ!
五十嵐(窪田正孝)たちのもとを訪れた渚(和久井映見)は、ある胎児の心エコー画像を見せた。
この胎児は「純型肺動脈閉鎖症」を起こして心臓から肺に血液がいかなくなっており、おそらく生後、もって数日の命だろうと予測された。
母親は、503号室に入院中の妊婦・池田しずく(伊藤歩)。しずくは、心臓カテーテルでの治療を望んでいるという。そのためには心臓を正確に把握できる画像が必要なため五十嵐に協力を求めたのだ。
ところが院長の灰島(髙嶋政宏)は前例のない、先天性心疾患に対するカテーテル治療を認めず外科手術を指示。裕乃(広瀬アリス)たちも、なぜ渚が外科手術ではなくカテーテル治療にこだわるのか疑問だった。
その後の検査で胎児は「食道閉鎖症」も併発していることが判明。産まれた直後に2つの外科手術はあまりに危険が伴うが・・・
純型肺動脈閉鎖とは、心室中隔欠損を伴わずに右心室の出口が閉鎖している比較的稀な先天性心疾患。右心室や三尖弁の形や大きさの異常、および心臓の筋肉を養う血管である冠動脈の異常を伴っていることがあり重症度が分かれます。
生後数時間からチアノ-ゼを呈し、時間経過とともにチアノ-ゼが進行してゆきます。そのため何らかの治療なしには新生児期乳児期を乗り越えられません。
国立研究開発法人 国立循環器病研究センター
先天性心疾患に対する治療の歴史をたどると、その修復は外科的治療を中心としてきましたが、1960年台に始まったカテーテル治療は、器具の進化や技術の向上によって近年急速に進歩を遂げています。
現在では外科的治療と協調して、その補完的役割を担うはかりではなく、心房中隔欠損、動脈管開存、肺動脈弁狭窄など一部の疾患においてはカテーテル治療のみで修復が完結するものがあります。
国立研究開発法人 国立循環器病研究センター
食道閉鎖症は食道が途切れている病気です。5000人にひとり程度(日本では年間200人程度)発生する病気で原因ははっきりしていません。
赤ちゃんの体がつくられてくる途中で、気管と食道が分離するときに何らかの異常が起きて発生するといわれています。
一般社団法人 日本小児外科学会
第11話 旅立ちの愛しき人・・・蘇る記憶(最終回)
五十嵐(窪田正孝)と甘春(本田翼)は、小学校の同級生だった郷田一平(工藤阿須加)との再会を果たす。
五十嵐との記憶を失っている甘春は、五十嵐が同じ小学校の同級生だったという一平の言葉で、過去の記憶を思い起こそうとするが、その時、一平が突然意識を失い倒れてしまう。
頭部CT検査の結果、一平の左中大脳動脈に血栓閉塞が見つかる。その時初めて、一平が甘春総合病院で眼科や皮膚科、消化器内科など、いくつもの科を受診していることが発覚する。
甘春は各診療科の医師と連携し合同カンファレンスを開く計画をたてる。その根っこには「ドクターズドクター」の考えがあるからだ。
甘春は医師たちに郷田の症状を共有。するとどの医師も共通して「代謝異常」を指摘。
五十嵐は郷田の左心室が肥大化していることと、それぞれの専門医の見解を総合して「ファブリー病」であると確定した。
「ドクターズドクター」を直訳すると「医師の中の医師」。臨床各科で採取提出される「がん」の確定診断をする病理専門医(病理医、麻酔科医、放射線科医)のこと
静岡市立清水病院
ファブリー病とは、細胞内での糖脂質の分解に必要な酵素が生まれつき足りないために、全身の細胞に糖脂質が蓄積する先天代謝異常症です。
この病気は、幼児期や学童期に鋭い手足の痛み、汗をかかない、おしりや陰部の赤紫色の発疹、頻回の腹痛や下痢といった症状があります。
これらの症状を放置しておくと青年期や中年期になって腎症状(蛋白尿、腎不全)、心症状(心臓の肥大、不整脈)、脳の症状(脳梗塞、脳出血)が出現し、年齢とともに症状が重症化していきます。
国立研究開発法人 国立成育医療研究センター
感想
私が医療ドラマが好きな理由は、その病気と戦う人の人生観や生き方、またその人一人に対しどれだけの医療従事者が関わっているかを見せてもらえることです。
「ドクターズドクター」の言葉通りどんなに良いドクターがいても、いわゆる「技師さん」と呼ばれる人たちとチームになってこそ命が救える。
ドラマですから「こんなうまくいくわけないじゃん」と思うことは多々ありますが、ついつい「成功してほしい」「奇跡がおきてほしい」とのめりこんでしまうのも事実。
人の生死は決して綺麗ごとではありませんが、やはりどこかに希望が感じられる医療ドラマってステキですよね!