相澤病院立て直しの実話「病院の治しかた」でみる病院再生の全記録

病院の治しかた[ドクター有原の挑戦] ドキュメンタリー
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院長の常識破りの大胆改革によって、赤字病院から信州を代表する病院に立て直したことで名を馳せた、社会医療法人財団 慈泉会「相澤病院」。

すでに「死に体」と揶揄されていた病院を見事復活させた経営改革は、今や病院再生のモデルケースにもなっているほど。

今回は、その実話を元に忠実に描かれた「病院の治しかた~ドクター有原の挑戦~」からわかる、相澤病院再生の一部始終を解説します。

日本は医療費削減が叫ばれる一方で、人手不足や働き方改革で人件費が膨らむばかり。日本は「病院が消える」時代がすぐそこまできています…。

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「病院の治しかた~ドクター有原の挑戦~」

病院ロケ地「群馬県済生会前橋病院」
放送日時2020年1月20日~3月9日 月曜 22:00 – 22:54
脚本山本むつみ
企画協力社会医療法人財団慈泉会 相澤病院
医事指導中澤暁雄、山本昌督
医療アドバイザー 堀エリカ
主題歌久保田利伸 「LIFE」(SME Records)

キャスト

主人公

◆有原修平/小泉孝太郎

病院の治しかた

有原総合病院副院長→理事長・院長

東京の大学病院で内科医として将来が嘱望されていたが、実家の有原総合病院の名誉理事長だった父親が急逝。

病院が巨額の赤字を抱え倒産危機に陥っていることを知り、父の最後の言葉「病院を頼む…」を受け継ぐべく、大学病院を辞めて実家に戻ってきた。

信念は「目の前に困っている人がいたら全力で助ける」

◆有原修平(小泉孝太郎)モデル

相澤孝夫

社会医療法人財団 慈泉会 理事長
相澤病院 最高経営責任者

一般社団法人 日本病院会 会長

プロフィール
  • 1947年 長野県松本市生まれ
  • 1973年 東京慈恵会医科大学卒業
  • 1973年 信州大学医学部附属病院勤務(内科学第二講座)
  • 1981年 特定医療法人慈泉会 相澤病院 副院長
  • 1994年 特定医療法人慈泉会 相澤病院 理事長・院長
  • 2008年 社会医療法人財団 慈泉会 相澤病院 理事長・院長。2017年より現職

◆倉嶋亮介/高嶋政伸

信甲斐銀行 融資部次長。実直で真面目な性格。当初は、有原総合病院と病院再生ファンドとのM&Aを進めていたが、銀行副頭取の米田(中村雅俊)の命令で、企業再生のプロとして送り込まれる。

◆倉嶋亮介(高嶋政伸)モデル

塚本建三

社会医療法人財団 慈泉会 特命顧問
前常務理事・本部長

プロフィール

八十二銀行出身の元銀行マン。相澤院長の招請に応じ、銀行を退職して退路を断ち、相澤病院常務理事・法人事務局長に就任

著書:『患者に医療を取り戻せ 相澤孝夫の病院改革』

その他キャスト

役名キャスト役柄
有原志保小西真奈美修平の妻。フリーの編集者
有原健次郎光石研修平の叔父。有原総合病院理事長・院長
兵頭悦子浅田美代子有原総合病院 看護部長。病院のことは何でも知っている
三隅律子磯野貴理子有原総合病院 主任看護師
安井久司山崎銀之丞有原総合病院事務長。修平の改革案にことごとく反発する
江口智也稲葉友有原総合病院 外来クラーク
膳場大輔片桐仁有原総合病院 システムエンジニア
米田正光中村雅俊信甲斐銀行 副頭取。亡くなった正太郎とは古くからの知り合いで、修平が副院長になることを条件に融資を継続する
桐山耕三木村靖司信甲斐銀行 常務取締役
田端進角野卓造田端医院 院長。正太郎とは医師仲間
有原正太郎大和田伸也修平の父。6年前に健次郎に院長職を譲り、自身は名誉理事長職に退いていた。脳梗塞で急逝。

あらすじと病院改革

第1話 しがらみをぶっ壊せ 借金10億…病院倒産!? カリスマ医師が再生に挑んだ“奇跡の実話”タイムリミット30日…敵はドクター全員!!

着任早々、銀行側に「1ヵ月で何らかの(病院再生)結果を出す」と約束してしまった修平(小泉孝太郎)がまず取り掛かったのがコスト削減

<問題点>

医薬品の仕入れ値が高い・・・医療材料御業者が5社入っているにも関わらず、価格がどこも同じで競争原理が働いていない

病院と業者の馴れ合い・・・価格を下げる努力をしていない

しがらみに囚われている・・・亡くなった名誉理事長の親戚にあたる事務用品の会社から、割高の製品を買っている

医療材料の種類が多すぎる・・・医師やドクターがそれぞれの好みで医療材料を選んでいる

<改善策>

医療材料御業者5社→2社に削減・・・業者に適切な見積もりを出させる

事務用品はカタログ販売で購入・・・親戚の業者とのしがらみを断ち切る

医療材料の種類を統一して15000点から9000点に削減・・・誰もが同じメーカーの同じ商品を使う方針に切り替える

③について医師・看護師から猛反発。

「人工関節の品質を落とせというのか!」という外科医に対し、人工関節の価格の差は、業者のサービスの差であって、品質に差はないことを説明。

看護師たちには、経費が浮いた分、これまで洗浄して使っていた「栄養チューブ」を使い捨てのディスポにすることを提案し、最初の難関を乗り切ったのだが・・・。

第2話 「暴走院長」禁断の人事改革! 全ナースが退職で救急大混乱!

病院を再生を円滑に進めるために、理事会で、現理事長である叔父の健次郎(光石研)の解任を求め、自ら理事長に立候補した修平(小泉孝太郎)に対し、周りの職員もさすがに動揺を隠せない。

ただし修平は怯まず、信甲斐銀行から異動してきた倉嶋(高嶋政伸)と共に、次の改革案として「人件費の削減」に着手する。

<問題点>

人件費のウエイトが高すぎる・・・病院は黒字であっても55%が限界なのに、有原総合病院は6割近くになる見込み。一般企業なら人件費が3割なら〇、4割で△、5割は✖だからとっくにアウト

<改善策>

人事制度を一新する

①能力主義人事の導入・・・全ての職種に対し、これまでの年功序列制度を廃止し、基本給を年齢給と職能給制度にわけて新設する

②適正にあわせた人材登用

①に対し、医師はもちろん看護師たちの怒りが爆発、10人弱の看護師が一斉に退職届を提出。

看護部長の悦子(浅田美代子)は引き留めようとするも、「患者さんを置いて勝手に辞めるような人間は引き留めても仕方ない」と一刀両断し、そのまま退職届を受理した。

当面は、看護師の新規募集をしながら、看護師の資格がなくてもできる仕事はクラークと事務に振り分け、注射や採血は検査技師と協力してドクターがやることで当座をしのぐ考えだ。

第3話 危険な再建プラン! 24時間365日無休診療で崩壊!? 奇跡の実話

病院の治しかた
看護部長(浅田美代子)&転職してきた内科看護師の吉沢(森谷奈緒子)

看護師が集団退職の穴埋めをすべく、転職希望者向けの説明会を実施。志保(小西真奈美)がデザインした、病院名入りのエコバッグが功を奏し10名の看護師を獲得したとはいえ、本当の改革はこれからだと宣言する修平(小泉孝太郎)。

<問題点> 有原総合病院ならではの強みがない

<改善策> 

病院経営の柱をつくる→『24時間 365日体制』

医師は「24時間365日体制なんて医療事故につながるだけ、無謀だ!」と反対するも、看護部長(浅田美代子)の「搬送されてくる人だけが急患ではない」との後押しもあり、とりあえず試験的にスタートさせることになった。

ある晩は、救急患者でロビーが埋め尽くされ、インフルエンザだと思われた子供が腸重積だったり、救急搬送された妊婦が胎盤早期剥離で帝王切開になるなど、てんやわんや。

1ヵ月後、『24時間365日体制』を続けるかどうかの審議が行われ、結論は「続行」となる。

倉嶋(高嶋政伸)曰く、現在の日本の診療報酬制度では外来患者を増やすより、ベッドを満床にするほうが病院経営的には安定するという。今回の試験的運用でも、「救急患者のうち7名が入院し15日程度で退院していく」という流れは決して悪くなかった。

これで収益構造の転換が図れると期待する修平だったが・・・。

第4話 ドクター失踪で産科消滅危機…確率1/20女児緊急心臓オペ!

正式に稼働させた『24時間365日体制』を円滑に進めるために、トリアージ講習会を開き、医師や看護師にトリアージの大切さを徹底させた。

その頃、たった一人の小児科医として奮闘してきた野林医師(松本岳)がとうとうダウン。修平(小泉孝太郎)は、 患者のことばかり考えて医師への気遣いが足りなかったことを悔やむ。

産科の医師からは、「小児科医が不在なら、お産を月に6件から10件程度に抑えたい」と言われてしまう。

倉嶋(高嶋政伸)は金融のプロとして「産科の閉鎖」を提案。閉鎖すれば当然減収になるが、その分経費もカットできるから、相殺するとそれほどの赤字にはならないという。

<問題点> 

小児科医が一人もいない・・・新生児のフォローができないため、リスクのあるお産は受けらず、これまで収益の柱となっていた「分娩数」が減ってしまう

産科の人件費・・・分娩数が減れば、産科のスタッフ全員の人件費を賄えるだけの利益が出ない

<改善策> 

救急外来をER型にする・・・救急専門医を採用し、3交代制にして他の診療科と切り離すことで、医師の負担を減らすのが狙い

※ER型とは ER専門医が全ての救急患者の診療、初期治療までを行い、必要に応じて専門医に引き継ぐ医療モデル

産科をリニューアルする・・・今どきの産科のサービスを取り入れるため、看護師や助産婦を研修に出して、他病院のノウハウを学ばせる

この改善策に対して倉嶋は大激怒。なぜならどちらも新たな人件費が必要だから。

半年後、倉嶋が心配したとおり赤字は5億を超えていた。産科の評判は良くなったものの、5億という数字は参加とERをフル稼働させても解消できる金額ではない。

そんな状況の中で「次は心臓カテーテル室だ!」という修平に対し、さすがの倉嶋もブチ切れて・・・。

第5話 入院患者の争奪戦!? 99人の町医者VS大病院 崖っぷちの逆転奇策!

病院の治しかた
地域医療連携室長の江口くん(稲葉友)

倉嶋(高嶋政伸)は修平(小泉孝太郎)の暴走ぶりに辟易していた。

病院も産科をリニューアルしERをフル稼働して赤字解消に奔走しているが、赤字額が大きいだけに、ほかにも抜本的な改革が必要だ。

<問題点> 

患者数が足りない

地域の開業医からの信頼が無い・・・紹介状への「返書」があまりにも事務的だったり、杜撰なことが発覚した

<改善策> 

地域医療ネットワークの構築・・・地域の「医院」「クリニック」「診療所」とネットワーク体制を作り、患者を紹介してもらうのが狙い

開業医から依頼があれば、搬送や検査・入院を24時間365日断らずにすべて受け入れる。患者の情報はお互いに共有し、退院後は紹介元の開業医に患者を返す

入院患者を増やす(ベッド数を増やす)・・・診療点数の稼げる入院患者を増やす、かつ回転させるとで利益率アップを計る

地域医療連携室の新設・・・地域医療ネットワークの管理部署。開業医と有原総合病院との橋渡し役

修平は、地域医療連携室の室長にクラークの江口(稲葉友)を抜擢。二人は医療ネットワークに登録してくれる開業医をスカウトして回るのだが・・・。

第6話 裏切りの最終章へ! 銀行寝返り!? 闇の2人悪魔の“買収計画”

病院の治しかた
信甲斐銀行副頭取の米田(中村雅俊)

「24時間365日」と「地域医療ネットワーク」を新たな柱として動き出した有原総合病院。開業医からの評判も上々で、毎月500人ほどの患者が送られてくるという。

赤字脱出の目途も立ち、修平(小泉孝太郎)が次に目指すのが「救命救急センター」だ。ただし、ICU・最新のMRI・カテーテル治療室・ドクターカーなどの設備が足りない。

倉嶋(高嶋政伸)は、銀行の副頭取・米田(中村雅俊)に追加融資を打診するも、「この事業計画には社会の変化に対応していけるビジョンがない、大学病院のミニチュアに過ぎない」と一蹴されてしまう。

そんなある日、修平は、一人の患者がリハビリを嫌がっているのは、退院後の生活に不安があり、あえて退院を急がないからだと知る。

<問題点> 

脳疾患患者の長期入院(40日以上~)・・・脳疾患は必ずリハビリが必要なので、どうしても入院日数が長くなる

リハビリ室が病棟から遠い・・・早く退院しようというモチベーション低下につながる

救命救急センター開設のための追加融資&認可が下りない

<改善策> 

リハビリ器具の一部を廊下に移動

救命救急センター開設・・・国からの運営補助金を活用した病院経営

退院支援病棟の設置・・・「救急医療」と「退院支援」の2本柱で、有原総合病院ならではの強みとする

修平は、「退院支援病棟の設置」を含めた事業企画書を持って、再度、米田の元に追加融資を頼みに行くのだが・・・。

最終話 “命はカネで買え”100兆円のワナで病院消滅! 奇跡の大逆転

病院を陰ながら応援してきた信甲斐銀行副頭取の米田(中村雅俊)が、急性大動脈解離で急逝。

当初は融資を継続するといっていた銀行も、常務の桐山(木村靖司)と隆泉会グループの田所(池田成志)の陰謀によって白紙に戻されてしまう。さらに隆泉会グループの傘下に入るように持ち掛けられる。

おまけに米田が水面下で手を回したせいで、せっかく進めていた退院支援病棟の工事もストップされてしまう。

病院を失うことだけは避けたいとの考えから、一時はM&Aの話を進める決心をした修平。有原総合病院も、もはやこれまでか!と思われたその時、救世主が現れる。

修平がかつてクビにした、叔父の健次郎(光石研)だ。健次郎が、病院に隣接する自分の土地を担保に入れてくれたおかげで、県外の長野第五銀行が融資を約束してくれたのだ。

半年後、「救命救急センター」の運営が正式にスタート。有原総合病院は今も地域医療の砦として歩みを止めていない。

修平の次の目標は、『初期費用0円、年金で入居できる高齢者住宅』

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まとめ

相澤病院が理念に掲げているのは「病気で困っている人がいれば、とにかくまず助けの手を差し伸べる」。

その理念は1908年(明治41)の創業以来、現在も変わることはありませんが、相澤理事長曰く、現在の医療体制では「理想の追求と経営の安定」のバランスを取ることは非常に難しいと指摘しています。

さて、「病院の治しかた~ドクター有原の挑戦~」は病院経営という観点から相澤病院を見つめたドラマですが、その相澤病院に勤務していたのが、内科医師であり作家の「夏川草介」さん。

夏川さんは自身の経験を元に「神様のカルテ」で相澤病院の奮闘ぶりを描いています。

相澤病院再生の立役者は、相澤理事長と右腕の塚本建三氏ですが、「神様のカルテ」を見ると、現場にいる一人一人の医療従事者の努力のたまものであることを思い知らされます。

\ 福士蒼汰主演「神様のカルテ」 /
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