『アライブ がん専門医のカルテ』で見るがん患者の不安や悩み

アライブがん専門医のカルテ ドラマ
記事内に広告が含まれています。

外科や救急救命を取り扱った医療ドラマが多い中で、『アライブがん専門医のカルテ』は腫瘍内科医と外科医がタッグを組んでがん治療に挑む物語です

注目すべきはどろどろの医療ドラマではなく、がん患者本人や家族の不安悩みをリアルに表現したヒューマンドラマであること。

1話完結で暖かいストーリーに仕上がっていますが決してきれいごとではなく、がんを経験した方でしかわからない心の痛みや辛さが見事に表現されています。

がんの経験のある方もない方も、「自分のこと」に置き換えてぜひ視聴してみてください。

スポンサーリンク

『アライブ がん専門医のカルテ』

引用:FOD

2020年1月9日~3月19日 木曜よる 22:00 – 22:54 木曜劇場

スタッフ

脚本:倉光泰子
プロデュース:太田大、有賀聡
演出:髙野舞 石井祐 水田成英
音楽:眞鍋昭大
主題歌:「はるどなり」須田景凪

医療監修 他

医療監修:松本 尚(日本医科大学)
腫瘍内科監修:小野麻紀子(がん研有明病院) 松原伸晃(国立がん研究センター東病院) 髙橋秀和(順天堂大学)
腫瘍内科全面協力:勝俣範之(日本医科大学)
婦人科監修:茨木 保(いばらきレディースクリニック)
産婦人科監修:荻田和秀(りんくう総合医療センター)
医療取材協力:山本昌督

\ 腫瘍内科全面協力 勝俣範之先生執筆 /

ロケ地

横浜みなと赤十字病院
病院ロケ:横浜市立みなと赤十字病院

横浜みなと赤十字病院(横浜みなと総合病院の外観)
昭和大学横浜市北部病院(病院廊下)
立川病院
医療法人産育会堀病院
メディカルトピア草加病院
横浜みなとみらい万葉倶楽部(病院屋上)
神奈川県立がんセンター(関東医科大学附属中央病院)

キャスト

恩田心(おんだ こころ)/松下奈緒
横浜みなと総合病院の腫瘍内科医。普段は名前と腫瘍学(oncology:オンコロジー)の略から「オンコロ先生」と呼ばれている。

梶山薫(かじやま かおる)/木村佳乃
横浜みなと総合病院の消化器外科医。関東医大中央病院から転院してきた肝臓がんのスペシャリスト。心(松下奈緒)に、ある秘密を隠している。

結城涼(ゆうき りょう)/清原翔
横浜みなと総合病院の研修医。実家が外科医であり自分も外科に進むつもりでいる

夏樹奈海(なつき なみ)/岡崎紗絵
横浜みなと総合病院の研修医。小児科医を目指しているが腫瘍内科にやりがいを感じて迷っている。

光野守男(みつの もりお)/藤井隆
横浜みなと総合病院の腫瘍内科医。明るく朗らかな性格で医師や患者たちから信頼されている

阿久津晃(あくつ あきら)/木下ほうか
横浜みなと総合病院の腫瘍内科部長。病院内に腫瘍内科を創設した張本人。

恩田匠(おんだ たくみ)/中村俊介
心の夫。売れない小説家。落下事故に遭遇して意識が戻らない。

恩田漣(おんだ れん)/桑名愛斗
心と匠の一人息子。小学1年生。おじいちゃん(京太郎)に懐いている

恩田京太郎(おんだ きょうたろう)/北大路欣也
匠の父。脚本家で料理が得意。

須藤進(すどう すすむ)/田辺誠一
関東医科大学附属中央病院の消化器外科副部長。薫(木村佳乃)の恋人で元上司。

あらすじ

第1話 原発部位が不明のがん

◆村井恵子(石野真子)55才
原発不明がん。余命3か月を宣告されホスピスを勧められているが、パートナーの忠司(田口 トモロヲ)は積極的治療を望んでいるため決心がつかない。ただし忠司は若年性認知症が日々進行していた。

恵子の不安と悩み

がんが腸間膜まで浸潤しているため、薬物療法で原発巣を小さくしてから切除する方針で進んだものの、抗がん剤の「パクリタキセル」でアナフィラキシーを発症。ドセタキセルに変更するも合わず治療の限界を感じていた。

治療の選択肢がないのであれば、若年性認知症を患っている忠司の記憶があるうちに、たくさん思い出を作りたいから、もう投薬治療はしたくない。一方で、心先生(松下奈緒)が教えてくれた3つの「あ」が心をよぎる。

あせらない・あわてない・あきらめない…

x.com

◆高坂民代(高畑淳子)64歳
肝臓がん。3度目の再発。長年通院しているため病院の事情に詳しい。元化粧品メーカーの美容部員でメイクにうるさい。明るく前向きで、根治は難しいことも悟っている。

第2話 知られざる、男性の乳がん

◆日ノ原徹(寺脇康文)58歳
乳がん全体の1%未満といわれる「男性乳がん」を発症、ステージ2まで進んでいた。現在は離婚して一人暮らしだが、娘が1人いる。検査の結果、遺伝性の疑いがあることが判明し、自費での詳しい検査をすすめられる。

徹の不安と悩み

「男性乳がん」という事実にただただ驚いている。さらに遺伝性の可能性があることを告げられるも検査費用が高額であることや現実を知ることの恐ろしさもあり、検査をためらっている。

娘の将来を考えれば今すぐ娘に伝えるべきだと思うが、何年も音信不通の娘に告げる勇気もない。

◆佐倉莉子(小川紗良)
26才の若さで乳がんを発症。全摘手術と抗がん剤治療を提案されるが、乳房がなくなるという現実を受け入れられないでいる。

莉子に手術を決心させるため、自身もがんサバイバーである薫(木村佳乃)は自身の体験を話し、再建した乳房を見せて勇気づける。

莉子の不安と悩み

偶然、病院で友達と出くわす。その友人は妊娠で通院しており、自分には結婚して子どもを産むという幸せがないかもしれないと愕然とする。

そんな悲しい人生を送るくらいなら死んだほうがマシなのではないかとさえ考えてしまう。そもそも、最近就職が決まったばかりなのに休職するなんて言い出せない。

さらには乳房を失うこと以上に、「人のしあわせを喜べなくなっている自分」に気づき自己嫌悪に陥る。

※がんサバイバーとは
がんの告知を受けてこれから治療する人、治療中の患者さん、治療が終了した人、あるいは患者さんの家族や友人など身近な人々のこと

第3話 愛する家族との最期の時間

肺がん患者である木内陽子(朝加真由美)の容態が悪化し救急搬送される。4年前に手術をしたが肝臓に再発。吐き気、嘔吐、脱水、意識障害もあり、そろそろ緩和医療に切り替えるのが妥当だろうと思われた。

在宅医療かホスピスかという選択肢の中、家族は治療を望んでいたが、夫、娘、それぞれの意見が異なり話がまとまらない。

陽子の不安と悩み

自分のことで家族が悩む顔を見るのが辛い。最終的には心先生(松下奈緒)や夫の意見を取り入れ在宅医療を選択したが、家事ができない夫のために調味料の場所や簡単なレシピなどをノートにつづる日々。

最初は、負担が増えるからといって在宅治療を反対していた娘たちが、夫と協力して家事を行っている姿を見るにつけ、自分が病気になったことで家族の絆が強くなったことに嬉しさを感じるようになる。

第4話 愛する人の死の受け入れ方

心(松下奈緒)の夫・匠(中村俊介)が亡くなってからというもの、匠の父である京太郎(北王子欣也)の様子がおかしい。

妙にハイテンションだったり急に匠の思い出話ばかり始めたり、ある時は、路上で酔って大声で泣いていたと警察から連絡があり迎えに行く始末だ。

心は京太郎が「うつ病」にかかっているのではないかと不安になる。ただし、本当は自分も強がって無理をしていることに気づけないでいた。

心の様子を心配した部長の阿久津(木下ほうか)は、心に「グリーフケア」の話をし、一方的に励ますのではなく寄り添うことが大事であることを説く。

心が京太郎に行ったこと

①悲しみを肯定する・・・匠の思い出話をして、あえて悲しみに触れさせる
②悲しみを表現させる・・京太郎の行動をすべて肯定し、悲しみを吐き出させる。自分も素直に泣く。
③儀式を行う・・・匠の好きだったカレーを3人で食べる。現実から目をそらさない

第5話 離婚調停中の母と希少がん

40才の長尾春香(遊井亮子)は、抗がん剤が効きにくい「粘液型脂肪肉腫」と診断される。当然入院が必要だが、仕事があるため入院は出来ないと頑なに拒否する。

春香の不安と悩み

夫と離婚調停中で息子の親権を争っているため、自分が入院したら親権をとられてしまうから絶対入院したくない。子どもと暮らしていくために、ようやく内定をもらったばかりなのに、休職することになれば息子と一緒に暮らせない。
離婚、難病、その上さらに子どもも失ったら、どうやって生きていけばいいの?

第6話 がんの標準治療と民間療法

27歳の土方絵麻(清水くるみ)は、若くしてステージ3の胃がんと診断される。術前抗がん剤治療を行ってからオペにより根治を目指す計画だが父の徳介(ベンガル)は猛反対。

両親は副作用がない治療を目指すと謡っている民間療法にすがるも、そのクリニックはあえなく倒産。再度、心(松下奈緒)に娘を助けてほしいとすがってくる。

絵麻の父の不安と悩み

これまで何人も自分の家族や知人が「抗がん剤」で治療する姿を見てきたが、みな苦しみながら死んでいった。抗がん剤は毒だとしか思えない。

〇パーセントの生存率だとか説明されても所詮ただのデータであって、娘に苦しい思いはさせたくない。今となっては民間療法でもなんでも、すがるしかない。

第7話 がん再発の父と引きこもりの息子6030問題

65才の武井正弘(たけい まさひろ)3年前に膀胱がんを患い膀胱を摘出するも、肺への転移が発覚、がん性胸膜炎を発症しており胸水も確認された。

至急、入院による胸水ドレナージと抗がん剤治療が必要だが、再就職したばかりなので通院で治療してほしいとの一点張り。余命もネットで調べ、研修医に問い詰める始末だ。

そんな矢先、胸水がたまってサチュレーションが下がり救急搬送される。

正弘の不安と悩み

一人息子の健太(篠原篤)は俗にいう引きこもりで10年程前から一切口を聞いていない。昔は優秀なサラリーマンだったため現実が受け止められず、息子のためにと、大手企業の求人広告を集め続けることで現実逃避している。

息子が救急車を呼んでくれたことが何よりの救いだったが、自分が死んだあと息子はどうやって生きていくのだろう。

※6030問題とは
60歳前後の親から自立できず、面倒を見てもらっている30歳前後の子どもの存在のこと

第8話 18歳の少年が抱えるがん

高校3年生の井上和樹(萩原利久)は、幼いころに胚細胞腫瘍で入退院を繰り返し、今回2度目の再発。大学進学の目前だっただけにショックが大きい。

自身のがん闘病の体験を綴ったブログを運営しており、読者からは「希望」と呼ばれている。

和樹の不安と悩み

「がんばってね…」という励ましが一番辛い。サッカー部の仲間がくれた寄せ書きも素直に喜べない。どうして自分ばかり辛い目にあうのか。

本当は不安で圧し潰されそうなのに、ブログでは読者をがっかりさせないために嘘の記事を書いて元気なふりをしている。不安な気持ちを親や友人には相談しずらいから、気持ちをしまいこんでいる。

院内で行われた患者交流会を目にし、子どもの頃「君の笑顔は人を幸せにする力がある」と言われたことを思い出し、ブログに素直な感情を投稿する。

<真っ暗な世界に>
ほんのわずかだけど光がみえた
この世が憎くなるときがある
自分をのろいたくなるときも
でも、どんなにつらいときでも不思議と笑える日がある
偽ることなく笑える日が…

第9話 妊娠中にがんになったら…

39歳の小山内静(山田真歩)が切迫流産で救急搬送される。胎児のエコー検査の結果、肝臓にがんを発見。5年前に患った大腸がんの多発性肝転移だと思われた。

この時、静は妊娠12週。凍結保存した卵子を使ってやっと授かったのに、妊娠中に再発という最悪の結果を迎えてしまったのだ。

一日も早く抗がん剤の治療が必要だが、胎児への影響は計り知れない。心(松下奈緒)からは母体優先の考えで中絶を勧められるも、静は子どもは絶対おろさないと心に決めていた。

静香の不安と悩み

がんになって初めて、自分の身に何があってもおかしくないとわかった。がん患者は、結婚・妊娠・出産・仕事とすべてにおいて諦めることが多い。

(自分が編集長をしている「NOT ALONE」という雑誌の中で)自身の失ったものにしがみつくより、闘病しながらでも得られる幸せを発信したいと考えているが、自分のこととなると、やっぱり諦めきれない。

夫に私と結婚したことを後悔させたくない。もし子どもが産めなかったら離婚する。

第10話 すい臓がんと、最後の試練

佐伯芳雄(相島一之)は、膵臓の周囲の主要な動脈や門脈に浸潤しながらも切除可能な「ボーダーラインすい癌」。

治療は術前化学療法で原発巣を縮小させてからのオペを計画するが、弟の隼人(丸山智己)は、すい臓がん手術の症例が多い、有馬総合病院へ転院させるといって譲らない。

芳雄の不安と悩み

自分の病気のことより弟のことが心配。弟は会社を経営しており治療費や月々の生活費まで面倒みてくれているが、実は経営が思わしくなく、無理をしていることに気づいているからだ。

ただし弟には気づかれたくないように、いつも取り乱すことなく強いお兄ちゃんを演じている。弟は自分の自慢だから、幸せになってほしいと願っている。

最終回 乳がん再発を乗り越えて

橘千寿子(三田寛子)55歳
ステージ3の食道がん。すぐにでも手術が必要な状態だが、千寿子はなぜか手術日を延期してほしいという。親一人子一人で育てた娘の結婚式を控えているからだ。

一方、母の体を気遣う娘は、結婚式は延期するから、すぐに手術してほしいと懇願する。

千寿子の不安と悩み

娘の結婚はとっくに破談していることに気づいているが、「やさしい嘘」をつく娘の思いやりに感謝し、知らないふりをしている。自分の病気のせいで娘の人生をこわしてしまったのかと思うと切なくてやりきれない。

元気になったら介護の仕事にもどることがせめてもの希望。

◆梶山薫(木村佳乃)
5年前に乳がんを患い、左乳房を全摘、ホルモン剤を継続してきたが再発。骨転移がみられドテタキセルを投与するも改善が見られず。検査の結果ハーツー陽性の乳がんであったことが確認された。

薫の不安と悩み

がんの手術をうけた日から5年経過し、もうすぐセカンドバースデーを迎えるタイミングでの再発だったためショックが大きい。

できれば消化器外科医を続けたいが、骨転移による痛みも出現し、現実は難しいかもとも思っている。彼の優しさも今は負担でしかない。

注:あらすじに登場する薬剤や治療法は当時のものであり、この限りではありません。

スポンサーリンク

『アライブがん専門医のカルテ』はどこで見られる

『アライブがん専門医のカルテ』は下記の動画配信サービスで視聴可能です。

FOD

Amazonプライムビデオ

スポンサーリンク

最後に/日本のがん治療の現状

厚生労働省が発表した「全国がん登録 罹患数・率報告 2020」によると、男性は前立腺がんが8万7,756人(16.4%)と最も多く、次いで大腸がん8万2,809人(15.5%)、肺がん8万1,080人(15.2%)、胃がん7万5,128人(14.0%)、肝臓がん(肝および肝内胆管)2万3,707人(4.4%)の順になり、2019年と比べると、肺が胃を上回りました。

一方、女性は乳がんの9万1,531人(22.3%)が最も多く、次いで大腸がん6万4,915人(15.8%)、肺がん3万9,679人(9.7%)、胃がん3万4,551人(8.4%)、子宮がん2万8,492人(6.9%)の順となっています。

日本で現在行われているがん治療は、主に①手術療法、②放射線療法、③化学療法(抗がん剤)、④免疫療法の4つ。

また、これまで化学療法の主流だった「抗がん剤」以外にも「分子標的治療」が進歩し、競泳女子日本代表の池江璃花子選手が白血病を克服したのは記憶に新しいところです。

とはいえ、がんは再発しやすい病気の一つであることに違いはありません。

再発率はがんの種類やステージ、進行度によって異なりますが、大腸がんステージⅠで5.7%、ステージⅡで15%、ステージⅢで31.8%、肺がんステージⅠの非小細胞肺がんで20~30%、食道がん根治手術後の再発率は30~50%と言われています。

つまり、根治が難しければ『がんと共に生きていく』ことが求められているのです。

実際はドラマのようにきれいごとでは済まされませんが、ドラマを視聴して思うのは、人間は誰しも爪の先ほどの小さな「希望」を生きがいに変える力を持っているということ。

将来、自分ががんと診断されたとき、もう一度このドラマを見たいと思うかもしれない…そんな風に思える作品でした…

タイトルとURLをコピーしました