映画「風に立つライオン」は、アフリカ・ケニアで国際医療活動に従事した実在の日本人医師を元にした物語です。
日本の医療ドラマに見慣れてしまうと最先端の医療ばかりが蓄積されていきますが、この作品を見るとあらためて「命はきれいごとではない」ことを目の当たりにします。
この記事では、映画「風に立つライオン」のスタッフや豪華キャスト、あらすじや主題歌、またモデルになった医師のプロフィールも紹介しています。
エンディングに流れる「さだまさし」さんのアメイジング・グレイスにきっと涙することでしょう。
映画「風に立つライオン」
基本情報
公開日 | 2015年3月14日公開 全国東宝系 |
原作 | さだまさし「風に立つライオン」(幻冬舎文庫) |
企画 | 大沢たかお |
監督 | 三池崇史 |
脚本 | 斉藤ひろし |
ゼネラルプロデューサー | 奥田誠治 |
エグゼクティブプロデューサー | 門屋大輔 |
プロデューサー | 藤村直人 坂美佐子 前田茂司 |
アソシエイトプロデューサー | 北島直明 |
音楽 | 遠藤浩二 |
後援 | 長崎大学 ナイロビ大学 |
協力 | 赤十字国際委員会(ICRC)日本赤十字社 在ケニア日本国大使館 ケニア共和国大使館 国際協力機構(JICA) 他 |
医療指導 | 長崎大学病院 消化器外科 長崎大学病院 離島・へき地医療学講座 長崎大学熱帯医学研究所(一瀬 休生) 大阪赤十字病院 |
撮影協力 | 長崎大学 文教キャンパス 長崎原爆病院 長崎大学 アフリカ海外教育研究拠点 長崎大学病院 長崎大学医学部 |
キャスト
役名 | キャスト | 役柄 |
---|---|---|
島田 航一郎(しまだ こういちろう) | 大沢たかお | ケニアの熱帯医学研究所で働く医師 |
草野 和歌子(くさの わかこ) | 石原さとみ | ケニア・ロキチョキオにある赤十字戦傷病院に勤める看護師 |
秋島 貴子(あきしま たかこ) | 真木よう子 | 航一郎が日本に残してきた恋人 |
青木 克彦(あおき かつひこ) | 萩原聖人 | 航一郎の大学の同期。熱帯医学研究所の同僚医師 |
児島 聡子(こじま さとこ) | 藤谷文子 | 航一郎の高校の同級生 |
田上 太郎(たがみ たろう) | 鈴木亮平 | 漁師 |
秋島 清美(あきしま きよみ) | 中村久美 | 貴子の母 |
秋島 誠一(あきしま せいいち) | 山崎 一 | 貴子の父 |
村上 雅行(むらかみ まさゆき) | 石橋蓮司 | 熱帯医学研究所の所長 |
ERICK OJIAMBOH PATRICK OKETCH NICK REDING LYDIA GITACHU | 現地の人役 |
航一郎のモデルとなった医師
柴田紘一郎 医師
1940年、大分県生まれ。
1971年~1973年長崎大学熱帯医学研究所所属し、アフリカ・ケニアのリフトバレー州立病院に勤務。帰国後、さだまさしと出会う。さだまさしは、アフリカの魅力を語り、真摯に生命と向き合う柴田医師の言葉に感銘し「風に立つライオン」を作曲。
帰国後は、宮崎医科大学第二外科助教授、宮崎県立日南病院長を歴任、現在は宮崎県の介護老人保健施設「サンヒルきよたけ」施設長。
ストーリー
1987年当時、大学病院に勤務していた航一郎(大沢たかお)は、ケニアの研究施設に派遣されることが決まった。
そもそも航一郎が医師を志したきっかけが、アフリカ医療に生涯を捧げた『シュバイツアー』の自伝に感動したからであり、ケニアに赴任することは願ってもないチャンスだった。
ただ一つの心残りは、愛する貴子(真木よう子)と離れ離れになること。
航一郎(大沢たかお)は、貴子(真木よう子)に「一緒に行ってほしい」と打ち明けるが、離島医療に従事する父・誠一(山崎一)の跡を継ぎたい気持ちもあり決心はつかなかった。
貴子(真木よう子)の事は気になりながらも、航一郎はケニアの研究施設で充実した日々を送っていたが、ある日、現地の赤十字病院から1ヶ月間の派遣要請を受ける。
意気揚々と現地に赴いた航一郎だったが、そこでの仕事は重傷で運ばれてくる兵士の治療、それもほとんどが四肢切断という悲惨なものだった。
兵士のほとんどはまだ少年というくらいの子供で、みんな麻薬づけにされて兵士にさせられているのだ。
それは誰しもが目をつぶりたくなるような光景であったが、そこに自分の役割を見出した航一郎は、1ヶ月という短期ではなく正式に異動を志願。持ち前の明るさと情熱で、人を信じられなくなっている兵士たちと打ち解けていくのに時間はかからなかった。
その頃、一人の日本人看護師・和歌子(石原さとみ)が派遣されてきた。和歌子のスキルと手際の良さに二人は時折ぶつかり合いながらも信頼できるパートナーに成長していく。
そんな航一郎と和歌子は、いつしか現地の人たちにとってなくてはならない存在になっていた。
ある日、少年兵・ンドゥングが担ぎ込まれる。航一郎によって命は取りとめたもののンドゥングは決して心を開こうとはしなかった。
なぜなら、ンドゥングは教師をしていた両親を目の前で惨殺され、自分は兵士として何人も銃口を向けてきたという暗い闇を抱えていたからだ。
航一郎は、ここにいる子供たちは「体の傷と共に心の傷を治す必要がある」という信念を持ち、和歌子と一緒にンドゥングの心を開こうと立ち向かっていくのだが・・・
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主題歌シネマバージョン
さだまさし「風に立つライオン」
作詞・作曲:さだまさし
編曲:渡辺俊幸
後半には、モデルとなった柴田紘一郎先生も登場します。お時間のあるときにゆっくりご覧ください。
◆歌詞
この曲は、柴田先生が日本に帰国後、さだまさしに語ったケニアの様子を歌詞にしたものですが、日本に残してきた当時の恋人が結婚したことへの気持ちが込められているようですね。
「おめでとう さようなら…」と。
突然の手紙には驚いたけど嬉しかった
何より君が僕を怨んでいなかったということが
これから此処で過ごす僕の毎日の大切な
よりどころになりますありがとう ありがとう
ナイロビで迎える三度目の四月が来て今更
千鳥ヶ淵で昔君と見た夜桜が恋しくて
故郷ではなく東京の桜が恋しいということが自分でもおかしい位です おかしい位です
三年の間あちらこちらを廻り
その感動を君と分けたいと思ったことが沢山ありましたビクトリア湖の朝焼け 100万羽のフラミンゴが
一斉に翔び発つ時 暗くなる空や
キリマンジャロの白い雪 草原の象のシルエット
何より僕の患者たちの 瞳の美しさこの偉大な自然の中で病いと向かい合えば
神様について ヒトについて 考えるものですね
やはり僕たちの国は残念だけれど
何か大切な処で道を間違えたようですね去年のクリスマスは国境近くの村で過ごしました
こんな処にもサンタクロースはやって来ます去年は僕でした
闇の中ではじける彼等の祈りと激しいリズム
南十字星 満天の星 そして天の川診療所に集まる人々は病気だけれど
少なくとも心は僕より健康なのですよ僕はやはり来てよかったと思っています
辛くないと言えば嘘になるけど しあわせですあなたや日本を捨てた訳ではなく
僕は「現在」を生きることに思い上がりたくないのです空を切り裂いて落下する滝のように
僕はよどみない生命を生きたいキリマンジャロの白い雪 それを支える紺碧の空
僕は風に向かって立つライオンでありたいくれぐれも皆さんによろしく伝えて下さい
最后になりましたが あなたの幸福を
心から遠くから いつも祈っていますおめでとう さようなら
感想
この作品は単なる「医療の映画」ではなく、ケニアの大自然や野生動物などから「地球」という壮大なスケールを感じさせる映画です。
まだあどけない顔の子供たちが銃を持って戦う姿は、昨今の国際情勢と相まって心が重たくなります。
あの現場に「足を切るくらいなら死んだほうがマシ」などという選択肢はなく、「生きる」ことを選び再び戦場に向かおうとする姿を、日本人は知るべきだと思いますね。
また、主題歌の歌詞にもあるように、この作品には一貫して恋人への思いが語られています。
極限の命の現場で柴田先生を支えていたのは紛れもなく日本に残してきた恋人への懺悔と愛情であり、いつの日か会って侘びたいという希望が生きる力になっていたのだと思います。
余談ですが、人は「一番愛した人とは結ばれない」というジンクスがありますが、自分の人生を振り返っても本当にそうだな~と思うんですよね。
でも、それもある意味幸せなことなのかもしれない。
その思い出でずっと生きていかれるから。
※2022.6月現在