NHKドラマ10「透明なゆりかご」は、漫画家沖田×華(おきたばっか)さんの実体験を描いた人気漫画、「透明なゆりかご 産婦人科医院 看護師見習い日記」を元にした、命の物語です。
全10話で構成される作品は、1話ごとに「消える命と生まれる命」がリアルに描かれており、「透明なゆりかご」というタイトルの意味が、切ないほど伝わってきます。
この記事では、ドラマのキャストやあらすじなどをご紹介をしながら、産婦人科にまつわる光と影に触れてみたいと思います。
「授かった命には全て意味がある…」
どうぞ、最後までご覧ください。
NHKドラマ10「透明なゆりかご」
放送期間:2018年7月20日~9月21日
脚本:安達奈緒子
音楽:清水靖晃
主題歌:Chara「せつないもの」
医療考証:名取道也 佐合治彦
発達障害考証:宮尾益知
医療指導:長尾百合子
看護指導:上田喜美枝
取材協力:国立成育医療研究センター 小田原市 横須賀市 海上自衛隊
原作
沖田×華『透明なゆりかご 産婦人科医院 看護師見習い日記』(講談社)
ロケ地
・前羽福祉館(小田原市)
・大口1番街商店街(横浜市)
・観音崎大橋(横須賀市)
・パシフィック・ホスピタル(横須賀市)
・かねよ食堂(横須賀市) など
主なキャスト
役名 | キャスト | 役柄 |
---|---|---|
青田アオイ | 清原果耶(幼少期:森山のえる) | 高校の看護科に通いながら、夏休みに由比産婦人科でアルバイトをしている |
由比朋寛 | 瀬戸康史 | 由比産婦人科の院長 |
青田史香 | 酒井若菜 | アオイの母。アオイが幼いころ離婚し、保険の営業をしながら女手一つでアオイを育てた |
望月紗也子 | 水川あさみ | 由比産婦人科のベテラン看護師 |
榊実江 | 原田美枝子 | 由比産婦人科の看護師長 |
あらすじと見どころ
第1回 命のかけら
看護師を夢見ているアオイ(清原果耶)は、由比産婦人科で看護師見習いのアルバイトをすることになったが、勤務初日にいきなりアウス(中絶手術)に立ち会うことになってしまう。
そんな中、ひとりの妊婦(安藤玉恵)が病院に訪れるが、名前も住所もデタラメの未受診妊婦で、子供の父親とは不倫関係らしい。
おまけに生まれた子は新生児低血糖を起しており、手足が冷たく元気もない。しかも、子供を置いて病院から姿を消してしまい・・・
死因の本当の第一位は「アウス(人工妊娠中絶)」だと語る院長(瀬戸康史)。毎日コンスタントに2~3人の胎児が闇に葬られ、瓶に入れて収集業者に引き渡すアオイ。
日本が発表する死者数に、この子たちはカウントされていません。
中絶は自分がきめたことなのに、涙しながら処置を受ける女性も多く、個人的には一方的に女性ばかりが傷ついているように思えてなりません。
第2回 母性って何?
ある日、アオイ(清原果耶)は、病院の玄関に置き去りにされていた出産直後の新生児を発見する。発見が早かったため、由比(瀬戸康史)の処置で一命を取り留め、アオイが担当することになった。
アオイは日増しに愛情を感じていたが、看護師の紗也子(水川あさみ)に「あまりのめり込まないほうがいいわよ」と諭されてしまう。
その頃、1型糖尿病を患い網膜症も併発している妊婦の里佳子(平岩紙)は、無理に出産をすれば失明する危険があり、妊娠を継続するべきか悩んでいた。
出産の高齢化や持病などによる「ハイリスク出産」。子供の将来を考えれば中絶も選択肢の一つと頭では理解するものの、「母性」がその選択を拒む。
赤ちゃんを捨てるという行為も許されることはありませんが、「病院の前に置いていく」ことも、母性のなせる業だと思えてなりません。
第3回 不機嫌な妊婦
アオイ(清原果耶)はささいなミスから、いつも不機嫌な妊婦・さおり(田畑智子)を怒らせてしまう。それがきっかけで、さおりの顔を見るたびに怯えるようになった。
ある日、アオイは看護学校の実習で市民病院に行くことになったが、ある病室でさおりが悲しそうな顔で誰かに付き添っている姿を目撃する。
実は、さおりの夫・雄二(平原テツ)は、虫垂炎のオペの際、全身麻酔で合併症を起こし、寝たきりになっていたのだ。
生まれたての我が子を脳死状態の夫の耳に近づけ、「元気な男の子だよ」と見せる妻。反応して涙する夫。
脳死の場合、医学的には「聞こえない」とされていますが、脳と心がつながっていることは脳科学的にも証明されており、個人的には「心が感じた」と思いたい。
第4回 産科危機
由比産婦人科に入院中の真知子(マイコ)の分娩が始まる。真知子が無事に女の子を出産し、夫の陽介(葉山奨之)が感激したのもつかの間、真知子の容態が急変。
由比(瀬戸康史)たちは必死に処置を行うも、癒着胎盤剥離による出血が止まらず意識も低下。大学病院へ搬送される真知子を、アオイ(清原果耶)は、ただ見送るしかなかった・・・
『命が消えるってやっぱりわからない。生まれるってこともよくわからない。命って何。ある日突然消えちゃうぐらい儚いのに、私たちの心も体も容赦なく突き動かす。命って怖い。でも、ありがとね、無事に生まれてきてくれて』
というアオイのセリフは、まさに命の現場にいるからこその言葉。この作品にこのような魅力的な言葉が多いのは、『劇場版コード・ブルー』を手掛けた安達奈緒子さんの脚本だからでしょうか。
第5回 14歳の妊娠
アオイ(清原果耶)はある日、見知らぬ男の子(込江大牙)が自分の後を付いてきていることに気付く。気になったアオイが男の子に問いただすと、男の子は「由比産婦人科に行く」と言う。
その頃、由比産婦人科では、由比(瀬戸康史)が榊(原田美枝子)が、今後の経営方針について言い争いをしていた。
その背景には、アオイが知らない「14歳の妊婦」の存在があり・・・。
出産で苦しむのは母体や家族、赤ちゃんだけではありません。第5話では、由比(瀬戸康史)先生や看護師たちの苦悩も見どころです。
医師とて普通の人間。妊婦さんと同じように喜びや悲しみの葛藤の中で生きていることを思い知らされます。
第6回 いつか望んだとき
アオイ(清原果耶)は、あることがきっかけで、ハルミ(モトーラ世理奈)と名乗る、不良っぽい少女に出会う。
ハルミは、あろうことか「山奥にある古い家に行けば、簡単に中絶手術をしてくれる」などと言うのだ。
アオイは怒って引き留めようとするが、たどり着いた古い日本家屋の家から出てきたのは、優しそうな老夫婦の千代(角替和枝)と重吉(イッセー尾形)だった。
この回も、人工妊娠中絶の是非を投げかけています。
アオイが、子宮から取り出された「命のかけら」を瓶に入れて窓際に立ち、「良いお天気だよ?見える?」と胎児に話しかける様は、そこだけ特別な世界に入り込んだような錯覚さえ覚えます。
第7回 小さな手帳
アオイ(清原果耶)が家でやかんを焦がしてしまったことがきっかけで、最近平穏だった母・史香(酒井若菜)との関係がギクシャクしていた。
そんな中、アオイの小学校の同級生・ミカ(片山友希)が出産のために来院。二人は再会を喜ぶが、ミカは夫も家族もいない中、たった一人で出産しようとしていたのだ。
自分が生まれた時の母子手帳を肌身離さず持っているミカの様子を見て、アオイは、母に怒鳴られてばかりだった子供の頃を思い出していた。
親子関係は人それぞれ。ミカのように今は亡き両親に思いをはせる人もいれば、虐待の思い出がトラウマになって離れない人もいる。
とはいえ、どんな親から生まれたとしても命であることに変わりはない。「ほんの一瞬でも、世界中の誰よりも愛されていたという証があれば、私たちは生きていける。そして、いつか誰かを愛することもできる気がする」というアオイの言葉に、命の強さを感じずにはいられません。
第8回 妊婦たちの不安
紗也子(水川あさみ)の妊娠がわかり、アオイ(清原果耶)や榊(原田美枝子)たちは大喜び。
紗也子は産休などを最小限にとどめ、今まで通り全力で働くと宣言するが、激しいつわりなどで業務に支障が出始めてしまう。
思ったように働けない自分にショックを受けた紗也子は、夫・広紀(柄本時生)にも気持ちを分かってもらえず苛立っていた。
そんな中、妊娠する前はバリバリのキャリアウーマンだった弥生(滝沢沙織)が、別の妊婦に突き飛ばされるという事件が起こり・・・。
妊娠が仕事のネックになって葛藤する女性もいれば、産みたくても産めない事情を抱えて苦しむ女性、中絶したことを後悔して自分を責める女性など、妊婦たちの不安はさまざまです。
何が正しいかなんて誰にもわからない。でも、わからないのが悪いんじゃなくて、わからないなりに前に進むこと。答えは「透明なゆりかご」の中にいる、わが子が教えてくれるのでしょう。
第9回 透明な子
由比産婦人科に、「小学生の娘が性被害にあったかもしれない」という電話が入る。
由比(瀬戸康史)は男性の自分が対応しない方がいいと考え、産婦人科医で元妻の侑子(原田夏希)を呼び寄せ、受け入れることにした。
その後、母親に付き添われた来院した少女を見てアオイは愕然とする。その子は、アオイ(清原果耶)が図書館で知り合った友達の亜美(根本真陽)だったからだ。
「性暴力被害者への理解」という、ちょっとショッキングなテーマです。若干10歳で相手は近親者…。今も、この広い空の下で、誰にも言えずに苦しんでいる子がいると思うと切なくなります。
その子がどのようにして立ち直っていくのか、いや、消えることのない傷を抱えながら、どうやって生きていくのか。一緒に考えてみてください。
最終回 7日間の命
妊娠20週で初産の妊婦・灯里(鈴木杏)の胎児に重い心臓病があることがわかる。本来4つの部屋に分かれているはずの心臓が2つしかなく、もって1週間の命だ。
灯里と夫・拓郎(金井勇太)は産んでも子供が長生きすることは難しいことを知るが、アオイ(清原果耶)らが見守る中、話し合った上で出産を決意。
大学病院の協力も得て、出産の準備を進めることになったが、灯里の様子がおかしい。由比(瀬戸康史)が「産むという決心は変わらないか」と問いかけると、灯里は重い口を開いて・・・。
「産むことが本当にこの子のためになるのか」「(産まずに)看取ってあげるのがこの子のためなんじゃないか」「むやみに生かして、つらい思いをさせることにならないの?」という灯里のセリフに、私は泣きながらウンウンと頷くしかありませんでした。
お腹の中で動き始めたわが子が、「生まれても一週間しか持たない」と宣告されたら、自分ならどんな選択をするのだろう…答えは出ません…
口コミ
最後に
「コウノドリ」「ジーン・ワルツ」「こうのとりのゆりかご」など、産婦人科をテーマにした作品は多いものの、「透明なゆりかご」は実話に基づいているためか、まるでドキュメンタリーを見ているような感動があります。
また、一つ一つのセリフが心に深く突き刺さり、涙なくしては見られません。
亡くなった我が子に向けて「この子はどんな気持ちだったんだろう…」と号泣する母親に対し、アオイはこう答えます。
「相手の気持ちがわからないって苦しいですよね…でも絶対わかんないですよね?
でも、一生懸命考えるしかなくて、自分の答えを信じるしかない」
人間はいつも後悔ばかりする生き物だけど、少なくともその時は「こうするのが最善の方法」と思って決めたんですよね。
全10話、それぞれの命の選択に拍手を送りたいと思います。
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