精神科医の本田秀夫先生は、長年子供たちの「生きづらさ」と向き合ってきた発達障害のスペシャリストです。
本田先生は常日ごろ、「普通って何?どこからが障害でどこからが普通なの?」と自問自答していると言います。
そんな先生の様子をドキュメンタリーにした「プロフェッショナル仕事の流儀『あなたらしく、笑顔で生きて~精神科医・本田秀夫~』を視聴し、先生の考え方や人となりに触れてみました。
「生きづらさ」は子供にも大人にも付き物。きっとあなたの心にも刺さるはずですよ。
『あなたらしく、笑顔で生きて~精神科医・本田秀夫~』
- 放送日:2019年10月29日 NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」
- 出演:本田秀夫
- 語り手:橋本さとし、貫地谷しほり
1964年 大阪豊中市生まれ
1988年 東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科医員
1991年~2010年 横浜市総合リハビリテーションセンター
2009年~2010年 横浜市西部地域療育センター長(兼務)
2011年~2014年 山梨県立こころの発達総合支援センター所長
2014年~2018年 信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長・診療教授
2018年~ 信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・医学部附属病院子どものこころ診療部部長(現職)
本田先生の素顔はこちら
ドキュメンタリーの内容と見どころ
医者としての転機
本田先生は東大医学部を卒業する時、興味があった診療科は精神科だけで、他には全く興味がわかなかったといいます。
当時は、発達障害というものに対する認知度やエビデンスもなく「発達障害で日常生活に支障をきたしている行動を抑える」ことが主流だった時代。
例えば、注意欠如・多動症(ADHD)の子供なら、どうやって多動を抑えるか、自閉スペクトラム症(ASD)であれば、どうやって他人への気配りを教えるか。
そんな治療方法に疑問を感じていた本田先生は、ある日、おもちゃで遊んでいて話しかけても全く答えようとしない子供に、遊びをやめさせようとしないで一緒に遊んでみたんだとか。
その子がほどなく口を開いてくれたことに感動し、先生は「子供を変えようとするのは無意味」なことに気づいたといいます。
空気を読めないことは、ある意味ハッピー!
障害は悪いことではない!
デコボコは残ったとしても、伸びるところを伸ばす!
この考え方が今の本田先生の原点です。
本田先生の治療方針
◆「治療しない」
精神科、特に発達障害の子供にするのは「治療」ではなく「診療」だと。意欲やモチベーションを持ち上げるのが仕事だと断言されています。
◆「相手の全てをリスペクトする」
相手を否定しないこと、すべてのことをプラスに考えること。
◆「まあ、いいんじゃないですか」
「否定しない」と相通じるものがありますが、全てを受け入れることから始まるという考え方です。
◆「障害は個性」
障害は個性の一部だから治療してもなくならない。
◆「興味のツボを探す」
子供の心をつかむために、その子がどんな話にキラリと目を輝かせるか探すのが上手になると、相手の心を開かせることができる。
◆「ゆっくりとゆっくりと歩こう」
長いスパンで見ることが大事。患者の中には31年間、ずっと診続けている患者さんもいるとか。
心に残る患者たち
◆ 小学5年生男児 自閉スペクトラム症(ASD)+学習障害(LD)
小学2年生から不登校。全ての知能が遅れているわけではなく、特定の漢字だけが書けない。
一つのことにのめり込む傾向が顕著に見られ、現在は寝ても覚めても野球観戦に夢中だが、不思議と「野球観戦」という漢字がどうしても書けない。
◆ Y君、20才 自閉症
7年前から本田先生のもとで治療中だが、現在はリゾート関連の会社で正社員として働いている。Y君の自閉症の特徴である「集中力があり、丁寧で細やかな作業をする」というのがメリットにさえなっており、会社の仲間からの人望も厚い。
◆ 成人男児 (障害の詳細は不明)
31年間、本田先生が診ている男性。最初は誰に対しても心を閉ざしていたが、先生の信念である「ゆっくりとゆっくりと歩こう」や「興味のツボを探す」会話術の中から、彼が鉄道に興味が持っていることがわかる。
現在、本田先生は「鉄道好きを集めたNPO法人」を運営しており、そこにはたくさんの発達障害の子供たちも集まってくるが、発達障害の子に共通するコミュニケーション不足などはどこにも感じられない。「自分が好きなことなら話せる」ことを証明した場となっている。
◆ 17才、女児 自閉スペクトラム症(ASD)+過剰適応
小学生から不登校。空気を読んでコミュニケーションを取ることが苦手で、良い時と落ち込んだ時の差が激しい。本人曰く、友達と喧嘩して泣いたりするとグッと落ち込むという。
実は彼女が初めて先生の問いかけに答えてくれたのは初診の日から2年後。治療と同時に「じっと待つ」ことの効果が現れ、人に相談できるようになったのは何よりの進歩だと先生はうれしそうだ。
最近では心の落ち込みを上手く対処できるようになった。その方法の一つが「猫カフェに行くこと」。猫と戯れていると「癒やされている」ことを実感するという。
今は高校の美術科に通っており、絵画コンクールに向けて絵を描く毎日。将来も美術系の仕事ができたらいいなと微笑む。
『あなたらしく、笑顔で生きて~精神科医・本田秀夫~』はどこで見られる?
プロフェッショナル仕事の流儀『あなたらしく、笑顔で生きて~精神科医・本田秀夫~』は、以下の動画配信サービスで視聴することができます。
◆NHKオンデマンドのアカウントをお持ちの方
- ログインし、『あなたらしく、笑顔で生きて~精神科医・本田秀夫~』と検索
- 選択したら「まるごと見放題パック(990円)」か「単品(220円)」を選ぶ
◆U-NEXTのアカウントをお持ちの方
- ログインし「プロフェッショナル仕事の流儀」と検索
- 選択したらエピソード横の「121」をクリック
- #158『あなたらしく、笑顔で生きて~精神科医・本田秀夫~』をクリック
- 「NHKまるごと見放題パック(990円)」か「72時間レンタル(220円)」を選ぶ
◆上記のどちらもお持ちでない方
- U-NEXTに登録する
- ログインし「プロフェッショナル仕事の流儀」と検索
- 選択したらエピソード横の「121」をクリック
- #156『あなたらしく、笑顔で生きて~精神科医・本田秀夫~』をクリック
- 「NHKまるごと見放題パック(990円)」か「72時間レンタル(220円)」を選ぶ
医療ドラマまにあとしての感想
私はバリバリ昭和世代の人間ですが、昔はクラスに一人や二人「変わっているね」と言われる子がいました。
いつも教室内を駆け回っていたり、一人だけ違う行動をしていたけど、そういう子供だと理解して先生もそれほど目くじらを立てなかったし、人懐っこい性格でクラスの人気者だったりしたものです。
今考えれば、それが「発達障害」だったのかもしれないけど、それはそれでお互いに幸せだったような気がします。
その後「障害」というレッテルがつけられた子に対し、不思議なものでも見るような目つきをする大人が増えた。障害のある子は感受性が強いから、その視線に耐えられずますます塞ぎ込んでいく。そんな我が子を見て親も疲弊していく。
そんな悪循環が続いている気がしてなりません。
このような番組は、できれば障害を持たない親たちこそ見るべきだと思うのが個人的な意見です。
発達障害をもつ子は、どこかで天才的な才能を持つ子も多いと言います。番組を見て「かわいそう…」と思うのではなく、我が子よりも優れている点があることに気づくことが、子供たちが「生きやすい」世の中につながると信じます。