女性にとって一番の幸せって何?
映画「ジーン・ワルツ」は、なかなか子宝に恵まれない女性の「産みたい」という切実な思いを叶えるために、日本の医療ではタブーとされている代理母出産をテーマにした作品です。
原作は「チームバチスタシリーズ」の海堂尊。
「チームバチスタシリーズ」のそれぞれの作品が日本の医療と密接にリンクしているように、「ジーン・ワルツ」も日本の産科医不足による「たらい回し問題」や不妊治療の実態にもメスを入れた、本格的医療ミステリーです。
桐谷美玲さんの妊婦役も必見!
映画「ジーン・ワルツ」
公開日 | 2011年2月5日 |
原作 | 海堂尊『ジーン・ワルツ』(新潮社刊) |
監督 | 大谷健太郎 |
脚本 | 林民夫 |
プロデューサー | 松橋真三、野村敏哉 藤田大輔、平野宏治 |
音楽 | 上田禎 |
主題歌 | 小田和正「こたえ」(アリオラジャパン) |
医療監修 | 産婦人科クリニックさくら |
助産婦指導 | 山本弥生 |
産科・婦人科協力 | 桜台マタニティクリニック |
救急救命指導 | 救急救命士 松浦善行 |
美術取材協力 | 製マリアンナ医科大学産婦人科 |
キャスト
役名 | キャスト | 役柄 |
---|---|---|
曾根崎 理恵 | 菅野美穂 | 帝華大学病院産婦人科医師兼 マリアクリニック医師 東城大学医学部出身 |
清川 吾郎 | 田辺誠一 | 帝華大学病院産婦人科学教室准教授 |
屋敷 | 西村雅彦 | 帝華大学病院産婦人科学教室教授。 自分に楯突く人間は全て排除する |
三枝 久広 | 大森南朋 | 極北市民病院産婦人科医。 マリアクリニック院長の息子 |
妙高 みすず | 濱田マリ | マリアクリニック助産婦 |
甘利 みね子 | 白石美帆 | マリアクリニックの患者。27才、胎内の赤ん坊に先天異常が見つかっている |
甘利 健司 | 音尾琢真 (TEAM NACS) | みね子の夫 |
荒木 浩子 | 南果歩 | マリアクリニックの患者。39才、人工授精により妊娠 |
荒木 隆 | 大杉漣 | 浩子の夫 |
青井 ユミ | 桐谷美玲 | マリアクリニックの患者。20才、未婚のギャル |
山咲 みどり | 風吹ジュン | マリアクリニックの患者。55才、顕微授精により双子を妊娠している |
三枝 茉莉亜 | 浅丘ルリ子 | マリアクリニック院長。 末期の肺がん。 |
あらすじ
北海道極北市で産婦人科医をしている三枝久広(大森南朋)が、帝王切開を失敗し一人の妊婦を死なせてしまったため医療事故として逮捕される。
しかしその死は、1万回に1回おこるかおこらないかくらいの合併症が原因で、防ぎようのないものだった。
その頃理恵(菅野美穂)は帝華大学病院で勤務する傍ら、久広(大森南朋)の母、茉莉亜(浅丘ルリ子)が経営する「マリアクリニック」に、週に一度非常勤医師として勤務していた。
院長は末期の肺がん、息子も逮捕という状況の「マリアクリニック」は、今診療中の4人の出産が終わったら閉院予定。
その頃、理恵の同僚の准教授・清川吾郎(田辺誠一)は理恵が代理母出産に手を出したという不穏な噂を聞きつける。確かに患者の一人、山咲みどり(風吹ジュン)は55才。どこから見ても普通の妊娠とは思えない。
代理母出産というのは本当なのか?いったい誰の子供を産もうとしているのか?
見どころ
4人の患者たち
◆甘利みね子(白石美帆)
27才、妊娠は順調だが胎内の赤ちゃんは「無脳症」であることがわかっている。「無脳症」の子は母親のお腹から出てしまえば生きることができない。
夫婦の出した結論は中絶ではなく「5分でも良いからこの子に光を見せてあげたい」と産む決心をするのだった。
◆荒木浩子(南果歩)
39才。5年前から不妊治療を続けているがことごとく失敗。これが最後のチャンスとして挑んだ人工授精で妊娠。比較的高齢なため、急遽帝王切開になる場合もあると告げられるが、「赤ちゃんに会えるならなんでもします」と。
泣き虫の夫(大杉漣)と一緒に出産の日を心待ちにしている。
◆青井ユミ(桐谷美玲)
20才のギャル。予定外の妊娠でマリアクリニックに来院。「さっさとおろして(中絶して)!」と理恵に当たり散らす。相手の了承も必要だと説得するも聞く耳持たず。
一度は「他の病院で手術するから!」と飛び出していくも、みね子(白石美帆)の話を聞くうちに命について考えるようになり「自分も産みたい」と。
◆山咲みどり(風吹ジュン)
55才。顕微授精により妊娠。10週目の検査で2つの着床を確認。つまり「双子」だってこと。実は、この患者は清川(田辺誠一)の指摘どおり「代理母」だった。
代理母出産であることはもちろん本人も納得しているし、一度出産も経験しているから表情は明るい。
双子というのがちょっと想定外だったが「計画が成功する日」を心待ちにしている。
理恵の過去
理恵は過去に、夫との子供を妊娠中に子宮がんが発覚。その際、子宮と卵巣の摘出手術をしたのが清川(田辺誠一)だった。
進行がんだったため子宮を摘出するのはやむを得なかったとはいうものの、事実上赤ちゃんを殺したことに間違いはない。
その際、理恵は清川に「卵巣を保存してほしい」と懇願。その後、離婚した理恵は何度か清川と関係を持っている。
ちなみに理恵の旧姓は「山咲理恵」。
豪華キャスト
大森南朋さん
今や医療ドラマ常連の「大森南朋」さんが、またまた医師役で登場!北海道極北市(架空)でカイザー(帝王切開)に失敗し逮捕されるという重要な役回り。コウノドリとは違った表情が見られますよ
音尾琢真さん(TEAM NACS)
北海道民が愛してやまない「TEAM NACS(チームナックス)」のメンバー。北海学園大学演劇研究会出身の、森崎博之・安田顕・戸次重幸・大泉洋・音尾琢真により結成された演劇ユニットです。
大泉洋さんほどの知名度はありませんが地元では大人気。彼が映画で見られる貴重な作品の一つになりました。
大杉漣さん
名俳優の大杉連さんも、この映画に登場しています。5年間も不妊治療を続けて40才前でようやく授かった子供の誕生を待ちわびている夫役を演じました。
出演作として「世にも奇妙な物語シリーズ」や「土曜ワイド劇場」などをはじめ、「アンフェア the movie」「シン・ゴジラ」「アウトレイジ 最終章」などのヒット作でも存在感を現していました。
2018年2月21日、66歳で没。合掌…
「ジーン・ワルツ」の楽しみ方
◆レンタルで見る
映画「ジーン・ワルツ」は動画配信されていませんが、TSUTAYA DISCASのお試し期間を利用して無料で見ることが出来ます。
◆DVDを購入する
◆原作を読む
この作品は「海堂尊ワールド」の代表作であり、原作を読むと「極北クレイマー」や「チームバチスタシリーズ」とリンクしてより楽しさ倍増ですよ。
「医療ドラマまにあ」としての感想
理恵は、日本で認められていない出産方法に手を染めたり、患者に肩入れせず冷静な診察をすることから「クール・ウィッチ(冷徹な魔女)」などとも呼ばれており、一見ただの冷たい女医のようなイメージですが、本当はただ子供が産めない人たちに赤ちゃんを届けたいだけ。
彼女が日本では認められていない出産方法に手を染めたのは、医療制度や産科医不足の現状を変えるのが自分の使命だからと言うものの、女として子供を産みたい、母親になりたいという気持ちと、何より自分の都合で見殺しにしてしまった赤ん坊への懺悔だと思えるのです。
(みなさんもうお気づきかと思いますが…)子供を産めない理恵がとった最終手段には賛否両論あるものの、そこには間違いなくかけがえのない命が存在し、4人の患者たちもそれぞれの幸せを手にします。
現実に、多くの日本人が海外で代理母出産を利用して夢を叶えていますからね。
「個人の幸せはシステムが作るわけじゃない」という理恵の言葉もあるように、どちらかというと頭の固い日本の医療制度に一石を投じる作品になったことは間違いないでしょう。