向井理「サマーレスキュー〜天空の診療所〜」は臼杵尚志医師の実話

北アルプスの小さな山岳診療所で医師として本来あるべき姿を見出していく「サマーレスキュー〜天空の診療所〜」。

ドラマのあらすじはフィクションですが、実はある医師の実話を元にした本格的医療ドラマに仕上がっています。

命の現場はER（救命救急）ばかりで起きているわけじゃない。

北アルプスの雄大な景色とともにリアルな現場をとくとご覧ください。

日曜劇場「サマーレスキュー〜天空の診療所〜」

スタッフ

放送日時	2012年7月8日 – 9月23日 日曜　21:00 – 21:54
脚本	秦建日子
音楽	羽毛田丈史
演出	日比野朗、本多繁勝、水村秀雄、竹園 元
医療監修	臼杵尚志 （香川大学消化器外科准教授） 森田照正 （順天堂大学心臓血管外科准教授）
医療指導	京里佳 （済生会横浜市南部病院消化器内科医師）
山岳指導	遠藤晴行 （山岳ガイドグループイエティ） 三苫 育 （社団法人日本アルパインガイド協会登山学校長）
病院ロケ地	がん研有明病院

主題歌

「輝く月のように」Superfly（ワーナーミュージックジャパン）

キャスト

役名（年齢）	キャスト	役柄
速水 圭吾（29）	向井理	明慶大学附属病院心臓外科のエース
小山 遥（28）	尾野真千子	山荘の娘。看護師をしていたが退職して山荘に戻ってきた。母を山の事故で亡くしている
倉木 泰典（55）	時任三郎	明慶大学附属病院教授。稜ヶ岳診療所を開いた花村の意思をうけ継ぎ、山岳医療に情熱を注いでいる
平原 あかり（34）	小池栄子	毎年ボランティアに参加している看護師
村田 佳秀（21）	小澤亮太	明慶大学医学部の学生
木野 憲太（19）	菅田将暉	茶髪の明慶大学医学部学生。大病院の跡取り息子
鈴木 真子（20）	能年玲奈（現：のん）	明慶大学医学部学生だが、医療知識が乏しく、医療機器をうまく使えない
平原 桃花（6）	本田望結	あかりの娘。おもちゃの聴診器で遊ぶのが好き
小山 雄一（65）	笹野高史	山荘の主人
小山 雪乃（38）	三浦恵理子	雄一の後妻
井上 幸治（37）	山崎樹範	山荘のアルバイト
沢口 哲夫（55）	松重豊	明慶大学附属病院心臓外科・呼吸器外科教授。速水の直属の上司で、診療所を閉鎖する考えがある
沢口 光香（23）	市川由衣	沢口教授の娘で速水の婚約者
速水 悦子（56）	中田喜子	圭吾の母親。腎動脈に大動脈瘤が見つかる
野村 恭介（35）	戸次重幸	慈倫会野村総合病院のオーナーで遥の恋人
高井 聡志（43）	佐藤二郎	明慶大学附属病院循環器外科医。山の素晴らしさを速水に伝える

あらすじと見どころ（ネタバレあり）

第1話　標高2514Mに急患あり

心臓外科医の速水圭吾（向井理）は、上司からの命令で、夏の間だけ山の診療所に出張を命じられるが、検査機器や満足な薬もない状況にカルチャーショックを受ける。

おまけに宿舎は雑魚寝、風呂もない生活に辟易していたが、小山遥（尾野真千子）との出会いによって、医師としての原点を見つめ直していく。

第2話　夕陽に賭ける緊急手術

稜ヶ岳山荘に登山客8人とガイド（ミスターちん）１人の山岳ツアーが訪れ、翌日、朔ヶ岳へ登頂する予定だという。

ただし、メンバーの朋子（内山理名）は、咳が出て心配だからと診療所で診察を受けるも、速水は軽い風邪と診断。安心した朋子は翌朝、ほかのツアー客たちと一緒に山荘を出発するのだが、一人だけついていかれず単独行動をとり行方不明になってしまう。

第3話　母の命を救え

速水（向井理）は倉木（時任三郎）から、母・悦子（中田喜子）に大動脈瘤が見つかり、いつ破裂してもおかしくない状況だと知らされ、急遽下山することになった。

病院に着いた速水は「自分に手術させてほしい」と願い出る。倉木が助手を務め、いざ手術が始まったものの、もはや手の付けられない状態だった。

第4話　麻酔が使えない手術に挑む

山荘に2人の男性客がやってきた。2人は神田（堀部圭亮）と上原（夕輝壽太）で、井上のかつての同僚だという。久しぶりの再会を喜ぶ2人とは対照的に凍り付く井上。なぜなら、井上は自分が会社をリストラされていたことを隠していたからだ。

翌朝、2人は翌朝、遥（尾野真千子）のガイドのもと登山へ出発。ところが神田が写真撮影に夢中になり滑落、岩で腕を深く切っているため、かなりの出血量だ。

なんとか診療所までたどりつくも、神田には薬のアレルギーがあり診療所にある麻酔が使えない。すぐにでも縫合しなければならないのだが・・・。

第5話　突然のプロポーズ

速水（向井理）の婚約者・光香（市川由衣）が高山病のため山道で倒れ、診療所に運び込まれる。光香は、速水が以前、沢口（松重豊）から打診された、ドイツ留学の資料を渡すために来たという。

ただし速水は、山の仕事が終わる秋になったら考えると返事をして、明日早々に下山するように諭す。

恋人の野村（戸次重幸）から山荘に何度も電話がきていた遥（尾野真千子）が、光香の下山に付き添うことになった。そして遥は、病院の経営をしている野村と再会する。

そのころ倉木（時任三郎）は、沢口から病院の医師不足について相談を持ち掛けられ、山荘の診療所を閉鎖するか存続させるか決断を迫られていた。

第6話　医学生の反乱

診療所に膝を擦りむいた登山客がやってくる。医学生の木野（菅田将暉）は速水（向井理）を呼びに行こうとするが、ほんのかすり傷だからすぐに治療してと頼まれてしまう。

そこへやってきた速水は激怒。木野に「無免許医の治療は違法行為」と注意するが、山の診療所に疑問を持ち始めていた木野は、「速水先生や倉木先生は、都会の病院で多くの命を救ったほうがいい。自分も下山して父親の病院を手伝う」と冷たく言い放って出ていってしまう。

第7話　診療所の危機！ 存続か廃止か

倉木（時任三郎）は、速水（向井理）と遥（尾野真千子）の前で、稜ヶ岳診療所を閉鎖することを決断するも、小山（笹野高史）にはなかなか言い出せないでいた。

その頃、あかり（小池栄子）は、娘・桃花（本田望結）の新学期の都合で、皆より一足先に下山する予定になっており、下山したら、離婚調停中だった夫と正式に離婚するという。

そんな矢先、あかりの夫・優太（長谷川朝晴）が、フラフラになりながら山荘にやってくる。父親に会いたかった桃花は大喜びで、翌日のピクニックも「パパも一緒じゃなきゃイヤ」といって譲らない。

仕方なく優太とガイド役の小山を加えた4人でピクニックへ行くことになったが、山中で、桃花を笑わせようとした優太の足が絡まりよろめいてしまう…。

第8話　運命の病院総会

速水（向井理）は、稜ヶ岳山荘の診療所を潰そうとする人たちと戦うことを決意。沢口（松重豊）と話し合うために下山し、「閉鎖を考え直して欲しい」と訴えるが、大学で最新の医療を学んで多くの命を救えと一刀両断されてしまう。

その時、倉木がやってきて、明慶の医療に関わる全ての人の意見を聞くために臨時総会を開くべきだと提案。沢口はそれを受け入れる。

第9話　おやっさんの命を救え

ある日、雪乃（三浦理恵子）は、出かけたきり帰ってこない小山（笹野高史）を探しに出ていたが、ほどなく山で倒れて動けなくなっている小山を発見。病状を聞いた倉木は、ヘリで東京の明慶大学付属病院に運ぶように指示を出す。

それを聞いていた速水は、小山を救うためにオペを執刀したいと申し出る。そして、倉木と高井が助手、あかりが器械出しという「稜ヶ岳山荘チーム」を結成する。

ただし沢口は、ヘリでの搬送ルールを破り、小山を明慶大学病院に搬送することに反対するも、倉木は遥の母親の事故の詳細を明かし、小山の命を救うために協力して欲しいと頭を下げる。

最終話　診療所最後の日に明かされる真実

閉鎖が決まった稜ヶ岳診療所。倉木も明慶大学病院を辞めたという。最後に皆で写真を撮ろうとしていると、そこに沢口がやって来る。

稜ヶ岳診療所の最終日。倉木と沢口は、遥の母親が事故にあった日に行こうとしていた山へと向かうが、そこにはすでに速水の姿があった。その場所は、遥に「願い事が叶う場所」と聞いていたからだ。

そのころ遥は、山荘で小山の荷物を整理していたが、“1982年 則子”と書かれたノートを見つける。そこに書かれていた内容とは…。

ドラマのモデルになった医師と診療所

ドラマのモデルは臼杵尚志医師

ドラマに登場する倉木（時任三郎）は、ドラマの医療監修もされている香川大学医学部准教授の「臼杵尚志うすきひさし」先生をモデルとして描かれています。

診療所のモデルは「三俣診療所」

ドラマのモデルで、臼杵医師が40年以上通われている「三俣診療所」は、長野・富山・岐阜3県の県境に位置し、北アルプス最奥の地とも言われる険しい場所にある山岳診療所です。山が好きな方なら、「裏銀座」の鷲羽岳と三俣蓮華岳の鞍部にある三俣山荘の隣と言えばわかりやすいかもしれません。

2023年現在、37名（男12人、女25人）のボランティアが在籍していますが、医師ともども登山口から10時間以上、時には悪天候の中を診療の不足物品等を背負って登るのだとか。

また、シーズン以外の季節も月に１回程度、登山練習を実施するなど、山が好きだからこそできる活動ですね。

◆ 三俣山荘の医療ボランティアに興味のある方はこちらから→岡山大学「北アルプス三俣診療班」

【参考】全国の夏山診療所

診療所名	運営大学
白馬診療所（白馬山荘）	昭和大学医学部
白馬診療所（白馬岳頂上宿舎）	昭和大学医学部
冷池山荘山岳診療所	千葉大学医学部
太郎平診療所	日本医科大学
剱沢診療所	金沢大学医学部
雷鳥沢診療所	金沢大学医学部
立山診療所	金沢大学医学部
槍ヶ岳診療所	東京慈恵会医科大学
奥穂高夏山診療所	岐阜大学医学部
涸沢診療所	東京大学医学部
西穂高診療所	東邦大学医学部
燕岳夏山診療所（順天堂大学高山医学研究所）	順天堂大学医学部
三俣診療所	岡山大学・香川大学医学部
北アルプス双六小屋診療所 （双六小屋夏山診療所）	富山大学医学部
蝶ヶ岳ボランティア診療所	名古屋市立大学医学部
常念診療所	信州大学医学部
徳沢診療所	日本大学医学部
上高地診療所	東京医科大学
白山診療所	金沢大学医学部
富士山五合目赤十字救護所	山梨赤十字病院
八合目救護所（八合目富士山診療所）	山梨大学医学部・富士吉田市立病院
富士山七合目救護所（山梨県富士山救護所）	千葉大学医学部
富士山衛生センター（富士山診療所）	浜松医科大学
北岳診療所	昭和大学医学部

まとめ

もともとこのドラマは、NHKのドキュメンタリー番組が三俣診療所を取材し、その番組がテレビ制作会社の目に留まり、ドラマ化されることになったのだとか。

それにしても山の診療所がすべてボランティアで行われていることや、医師も大学病院からの派遣でまかなわれていることには驚きました。

臼杵先生いわく、「山での診療は、一般の医療施設のように経過を診ながら治療することは許されず、医療人としての豊富な知識と迅速な判断、かつ山道を知っていることが重要」だといいます。

このドラマは私たちが普段知ることのない「山岳医療」とリアルに描いてくれました。山がお好きな方もそうでない方も、医師たちの奮闘ぶりをぜひその目で確かめてみてください。