医療ドラマまにあの私が最も心待ちにしている作品が、大泉洋主演の『ディア・ファミリー』。
今や医療現場で当たり前のように使われている「IABP(大動脈内バルーンパンピング)バルーンカテーテル」の誕生にまつわる実話であり、その背景には想像を絶する困難と奇跡、そして涙があったに違いないからです。→公開初日、行ってきました!
家族がが亡くなって悲しいというお涙頂戴の話ではなく、「人の愛が起こす奇跡」に未来を感じる勇気あふれる作品です。
みなさまも、是非劇場へ足をお運びください。
『ディア・ファミリー』
メイキング映像が公開されました。
2024.6.14(金)公開予定 配給:東宝
公式サイト https://dear-family.toho.co.jp/
原作
読了。主人公の人柄といくつもの偶然、そこにたくさんの愛情が加わってできあがった命の物語。ますます映画が見たくなる一冊です。
清武英利 『アトムの心臓「ディア・ファミリー」23年間の記録』
原作者プロフィール
1950年10月12日(73歳)宮崎県生まれ ジャーナリスト・ノンフィクション作家、元読売巨人軍取締役球団代表
1975年 読売新聞社に入社、東京本社社会部次長時代に、第一勧業銀行総会屋事件や山一證券の破綻などをスクープ
2014年『しんがり 山一證券 最後の12人』で第36回講談社ノンフィクション賞を受賞
2018年『石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの』で第2回大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞
◆ 清武さんは原作の「あとがき」でこのように語っています。
子供が大きな障害や病気を持って生まれたとき、親や家族の前には二種類の選択がある。
人は皆いずれ等しく死に行くのだから、その障害も仕方のない運命だと受け入れるか、あるいは運命に逆らい、必要であれば神の領域にも踏み込んで闘うか。
ごく稀にだが、運命に抗った親たちが驚くほどの高みへと上っていくことがある。たぶん、不運だと言われていた子が、彼らを遥かなところへ導いて行ったのだろう。
それは奇跡ではなく、愛したことへの報酬だ、と私は思う
スタッフ
監督:月川 翔 『君の膵臓をたべたい』『君は月夜に光り輝く』『そして、生きる』
脚本:林民夫 『永遠の0』『糸』『ラーゲリより愛を込めて』
音楽:兼松衆
プロデューサー:大瀧亮(WOWOW) 岸田一晃(東宝)
テーマソング
Mrs. GREEN APPLE 「Dear」
Mrs. GREEN APPLE
2013年結成のロックバンド。
メンバー:大森元貴(ボーカル・ギター)若井滉斗(ギター)藤澤涼架(キーボード)
主な作品:コカ・コーラCMソング フジテレビ系『ワールドカップバレー2023』日本代表応援ソング
映画『サイレントラブ』主題歌 カンロ「ピュレグミ」CMソングなど
2023年度「第74回NHK紅白歌合戦」初出場。その際に司会を務めていた大泉洋と共演している。
主人公モデル
大泉洋演じる主人公のモデルとなった方は、「東海メディカルプロダクツ」前社長(現会長)の筒井宣政氏(写真左)。
筒井宣政氏は国産初の補助循環装置「IABP(大動脈内バルーンパンピング)バルーンカテーテル」の生みの親です。
「東海メディカルプロダクツ」はもともとプラスチック樹脂の加工製品を作る小さな町工場でしたが、生まれつき「三尖弁閉鎖症(さんせんべんへいさしょう)」という難病をわずらっている次女のために「人工心臓」を作る決心をします。
宣政氏は自宅のある愛知から東京の大学病院へ通って医学の勉強しながら、3年後には試作段階までこぎつけたものの資金が続かず。
そこで考えたのが新たに医療器具の製造会社を立ち上げ、公的資金の援助を受けながら開発を続けること。この時すでにスタートから8年の歳月が過ぎていました。
しかも厚生省の認可をもらうためには数十億円もの経費がかかることが判明。もはや万事休すかと思われた宣政氏を奮い立たせたのは、実現に至らないことを薄々感づいていた佳美さんの一言。
「私は大丈夫だから、その知識を苦しんでいる人のために使って…」。
そんな中で筒井さんが病院で耳にしたのがバルーンカテーテルの事故。
欧米から輸入したバルーンカテーテルは体の小さい日本人には使いにくいことを知り、日本初の国産バルーンカテーテルの製造に方向転換します。
1年半後に試作品が完成したものの製品化には耐久試験や動物実験をパスしなければならず、当時は「実績がない」の一言でどこの大学病院からも冷たくあしらわれていたのだとか。
そして人工心臓の断念から2年が過ぎた1988年12月に厚生省の認可を取得。国産第一号のIABPバルーンカテーテルが誕生。現在までに世界中で17万人の命を救っています。
引用:医学の素人が12万人救う器具をつくれた理由|東洋経済オンライン
三尖弁閉鎖症とは、右心房と右心室の間に存在する「三尖弁」が閉鎖してしまう先天性(生まれつきの)心疾患です。肺への血流が阻害されることになるため、酸素が不十分な血液が全身へ巡ることになります。
新生児早期からの治療が必要であり、内科的治療や複数回の手術が行われます。
引用:Medical Note
IABP(大動脈内バルーンパンピング)バルーンカテーテルとは
心臓は全身の血液を循環させるためのポンプ作用をもっています。
しかし、急性心筋梗塞などで心不全となった場合、自己の心機能が回復するまでの間、心臓のポンプ機能や肺機能を代行する「補助循環」が必要です。
大動脈内バルーンパンピング(intra-aortic balloon pumping;IABP)は、バルーン(風船)のついたカテーテルを胸部下行大動脈内に留置し、心臓の拍動に合わせてバルーンの収縮(デフレーション)と拡張(インフレーション)を繰り返すことで心臓の働きを助ける補助循環法の一種です。
例えると、小さい力のない子供が重い扉を開けるのは難しいですが、子供がドアを押すときに誰かが反対側からドアを引いてあげればドアを開けることが出来ます。逆に子供がドアを引くときに誰かが押してあげればドアを閉じることが出来ます。
引用:医療法人錦秀会「大動脈内バルーンパンピング術」
映画ストーリー
1970年代、心臓疾患は日本人にとって致命的な病だった。
娘の佳美(福本莉子)は心臓に先天的な疾患を抱え、9歳の時に「余命10年」と告げられる。このまま何もしなければ20歳までは生きられない。
絶望の最中、小さな町工場を経営する宣政(大泉洋)は、医療には全くの素人でありながら娘のために自分が人工心臓を作ると立ち上がる。
素人の医療器具開発は限りなく不可能に近かったが、「ただ娘の命を救いたい」という一心で父と母は日本のトップクラスの研究者が集う研究会や大学病院を訪ね歩く。
さらに人工心臓の勉強に励み、有識者に頭を下げ、資金を用意して何年もその開発に時間を費やす毎日。
しかし「素人にできるはずがない」とあらゆる医療関係者にそっぽを向かれ、佳美の命のタイムリミットは刻一刻と迫っていくのだった。
キャスト
◆坪井宣政(つぼい・のぶまさ)/大泉 洋
ビニール樹脂製品の町工場の経営者。医療にはまったくの素人だが娘を救うために医療器具の開発を始める。
◆坪井陽子(つぼい・ようこ)/菅野美穂
宣政の妻
◆坪井佳美(つぼい・よしみ)/福本莉子
次女。先天性心疾患で余命10年と宣告された
◆坪井奈美(つぼい・なみ)/川栄李奈
長女
◆坪井寿美(つぼい・)/新井美羽
3女
◆富岡進(とみおか・すすむ)/松村北斗(SixTONES)
東京都市医科大学の日本心臓研究所で研究医(実在の医師がモデル)。
寡黙で人とは距離を置く性格で当初は一家の挑戦を冷めた目で見ていたが、宣政の娘への愛情と絶対に諦めない強い心を目の当たりにし、影ながら研究を手伝うことになる。
◆山本結子(やまもと・ゆうこ)/有村架純
宣政を取材するテレビリポーター
◆石黒英二(いしぐろ・えいじ)/光石研
東京都市医科大学教授、人工心臓の研究者。宣政の熱意に共感しサポートするが人工心臓の実用化を巡る方針で宣政と対立する。
◆佐々木肇(ささき・はじめ)/上杉柊平
東京都市医科大学、日本心臓研究所の研究医。昼夜問わず研究を重ね臨床試験を目指そうとする。
◆柳玲子(やなぎ・れいこ)/徳永えり
東京都市医科大学、日本心臓研究所の研究医。宣政の存在に圧倒され、人工心臓の開発に向け行動を共にしていく。
◆桜田純(さくらだ・じゅん)/満島真之介
医学博士。医療界の法則やルールなど、全く知識のない宣政の相談に乗る。
◆川野由希(かわの・ゆき)/戸田菜穂
宣政の娘・佳美(福本莉子)が入院している小児病室の隣のベッドで、先天性心疾患と闘っていた少女の母親。
まとめ/映画公開に向けて
『何もしない10年とやってみる10年、あなたはどちらを選ぶ?』
我が子の命を考えれば、何もしないという選択肢は無かったと思います。
ただし医学の素人が人工心臓を作るなど、99%の人が心の中では「無理だ」と思っていたはずです。
『奇跡』という言葉を調べると「常識では起こるとは考えられないような不思議な出来事」とありますが、常識に囚われなかったからこそ心臓治療を牽引するほどの医療器具の実現と、佳美さんが生きていた証を残すことができたのでしょう。
私生活でも12才の娘を持つ大泉洋さんは下記のようにコメントしています。
「自分も子供の親として、引き受ければとても苦しい撮影期間になるということは予想できましたが、娘の命を救いたいという一心で立ち上がり、絶対に諦めないこの家族の強さが観た人を必ずや勇気づけてくれると信じて出演を決めさせていただきました」
筒井宣政さんに憑依した大泉洋さんが見せてくれるであろう感動に、今から涙する私です。
皆様もぜひ会場で。
追記 6/14(金)鑑賞してきました!
札幌の郊外に住む私が映画を観る際は、いつも「新千歳空港シアター」に向かいます。
平日だったらそれほど混んでいませんし、空いていればリクライニング可能で広めの「特別席」に座れるから。買い物も楽しめるしランチもできるし、おすすめですよ。
この日も夏休み前の金曜日、さらに9:30~の上映ということで席はゆったり。最初の方から鼻水をすする声があちらこちらから聞こえてきたのが印象的でした。
ちょっとだけネタバレすると、冒頭の緊迫したシーンの謎が最後の最後で解き明かされます…
みなさまもハンカチをお忘れなく。