漫画家、沖田×華(おきたばっか)さんの代表作「お別れホスピタル」は、人生最期を時を過ごす「療養病棟」で、生きることの意味を問う人間ドラマです。
人生100年と言われて高齢化も加速する中、自分の愛する人や家族を「看取る」場面は、ますます身近になってくるはず。
この記事では、ドラマのあらすじをご紹介しながら、患者さん一人一人の生きざまに触れ、終末期に家族ができることを考えてみたいと思います。
実際の医療現場で起きている実話に基づく「お別れホスピタル」。原作漫画も合わせてごらんください。
土曜ドラマ「お別れホスピタル」
NHK総合 2月3日(土)スタート 毎週土曜 夜10時~10時49分 全4話(予定)
(再放送 毎週水曜/火曜深夜 午前 0:35~午前 1:24 )
脚本 安達奈緒子 『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命- 3rd season』『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』『おかえりモネ』『きのう何食べた?』など
演出 柴田岳志、笠浦友愛
音楽 清水靖晃
医療考証 山下晋矢
原作 沖田×華「お別れホスピタル」(小学館ビッグコミックス)
キャスト
役名 | キャスト | 役柄 |
---|---|---|
辺見 歩 (へんみ あゆみ) | 岸井ゆきの | みさき総合病院療養病棟、看護師。病院に内緒で喫煙している |
広野誠二 (ひろの せいじ) | 松山ケンイチ | みさき総合病院、内科医師。一般病棟から異動してきた。焼き鳥は櫛から外して食べる派 |
赤根涼子 (あかね りょうこ) | 内田慈 | みさき総合病院療養病棟の先輩看護師。美人で気が強い |
山田聖恵 (やまだ きよえ) | 円井わん | みさき総合病院療養病棟、看護師 |
三木康子 (みき やすこ) | 仙道敦子 | みさき総合病院療養病棟、看護師 |
南 啓介 | 長村航希 | みさき総合病院療養病棟、ケアワーカー |
谷山 衛 | 国広富之 | みさき総合病院医師 |
辺見加那子 (へんみ かなこ) | 麻生祐未 | 歩の母。佐都子のことで悩んでおり、歩を頼りにしている |
辺見佐都子 (へんみ さとこ) | 小野花梨 | 歩の妹。いじめが原因で引きこもっており、自傷を繰り返している |
あらすじ
注:ネタバレあり
海の見える「みさき総合病院」の療養病棟には、余命宣告された人や、病状に加えて認知症などで日常生活が困難な高齢者が入院している。
病棟看護師として働く辺見歩(岸井ゆきの)は、さまざまな事情を抱える患者やその家族に寄り添い奮闘している。
第1話 死ぬってなんだろう
スキルス胃がんで余命半年と宣告された本庄さん
スキルス胃がんで余命半年と宣告された本庄さん(古田新太)は、タバコがやめられず、病院でも隠れてタバコを吸っている。
「好き勝手に生きてきたからいつ死んでも悔いはないという」態度だが、歩(岸井ゆきの)は、わがままを言うのも不安の裏返しなんだと思っている。
ある日、本庄さんの姿が見えなくなり、いつも内緒でタバコを吸っていた屋上に上がってみると、そこには車椅子だけが残っていて・・・。
大腸がんで認知症も進んでいる水谷さん
大腸がんで入院中の水谷さん(田村泰二郎)は、認知症も進んでおり、穏やかだった性格が一転粗暴になってしまったという。
病状が進み呼吸困難に陥ったある日、医師の広野(松山ケンイチ)から、人工呼吸器をつけるかつけないかの判断を迫られる。
「父は延命は望んでいないはずだ、それに入院費だって…」という息子(黒田大輔)に、妻・久美さん(泉ピン子)は「もう一度優しいお父さんとの時間を過ごしたい」と言って延命を望み・・・。
糖尿病を患いながらもお菓子が食べたいとねだる太田さん
太田さんはお菓子が大好きで、朝から晩まで「マームちゃんちょうだい」とわめいているが、もともと糖尿病の持病があり、なだめるのは容易なことではない。
その日は、向かいのベッドにいる山崎さん(丘みつ子)とともにお菓子を食べて超ご機嫌。いつもぶっきらぼうで愛想のない野中さん(白川和子)も一緒に穏やかな日を送るが、そんな日は長くは続かなかった・・・。
第2話 愛は残酷
介護疲れでダウンしてしまった久田今日子さん
久田今日子さん(高橋惠子)の夫(小林勝也)は肝臓がんの末期。自宅で8年間も介護していたが、腹膜炎を起して余命いくばくもない。
長年の介護疲れがたたり、とうとうダウンした京子さんは夫と同じ病室に入院することになったが、夫は一から十まで妻に甘え、休まるどころではない。
長年連れ添った妻は、夫の「おい」ですべてがわかることに、歩(岸井ゆきの)と広野(松山ケンイチ)は「愛があふれた病室」と感心するが、そこには誰も知らない妻の本音があって・・・。
ナースコールを押し続ける大戸屋さん
大戸屋さん(きたろう)は、大した用事もないのに、すぐにナースを呼びつける癖がある。その日のナースコールも全部で38回、さすがのナースたちも辟易している。
最近では、お気に入りのナース、赤根(内田慈)が駆けつけても、赤根の態度がそっけないからかブスッとした表情を崩さない。
そんな矢先、隣の患者に見舞いに来ていた少年に、「うちのおじいちゃん、食べられないからあげる」と飴を差し出され・・・。
20代の恋する乙女、幸村さん
幸村さん(根岸季衣)は認知症が進み、自分は20代で、ケアワーカーの南さん(長村航希)のことを恋人だと信じ、盛んにスキンシップを求めている。
そんな様子を「色ボケ」などと罵る人もいるが、「(若い男にベタベタする)母に嫌悪感がない訳じゃないけど、あんな幸せそうな母は見たことない」とうれしそうな息子さん(奥田洋平)。
ただし、南さんへの愛情表現が度を超え、食事介助を女性看護師に変更するも、南さんの介助でなければ食事をしないと言い張るのだった。
第3話 サンタさんはいるの?
意識の戻らない娘に10年声をかけ続ける佐古さん
シングルマザーの佐古さん(筒井真理子)の娘、ひとみちゃんは脳出血がきっかけで10年前から植物状態。歩(岸井ゆきの)は佐古さんに「きっと目を覚ましますよね」と聞かれたものの、言葉が出なかった。
しかし先輩看護師の赤根はすかさず「きっと」と答える。サンタさんみたいなものだと言う赤根。みんな頼りない命を前に望みをつなぎながら生きているんだ。
そんなある日、ひとみの誕生日をどうしても家で迎えたいから外泊させてほしいと懇願する佐古さん。熱意が伝わり主治医もOKを出した。
帰宅当日、看護師の赤根が病室のゴミ箱から「シスプラチン」を見つけてしまい・・・。
脳梗塞を繰り返す池尻さん
脳梗塞を繰り返す池尻さんは、なにかにつけて文句が多い。佐古さんの献身的な姿を見ても素直に認めず暴言を吐いてばかりだ。
ある日も大切にしていた指輪が見当たらず、ところかまわず「ドロボー!誰かに盗まれた!」と叫ぶ始末。実はそんな池尻さんにも悲しい過去があったのだ。
看護師をこき使う安田さん
安田さん(木村祐一)は年がら年中看護師を呼びつけては「足をさっさと揉め!」「アル中だと思って馬鹿にしやがって!」と、してもらうのが当たり前だと言わんばかりの態度だ。
ある日、その態度に見かねたケースワーカーの南さん(長村航希)が、患者である安田さんと取っ組み合いの喧嘩になり自宅謹慎処分に。
自暴自棄になった南さんは「自分にケースワーカーの資格はない」と退職を申し出るのだが・・・。
第4話 未来のわたし
ガンの末期で寝たきりの水谷さんの妻
水谷さんの妻・久美さん(泉ピン子)が最近病院に顔を見せない。どうやら体調が悪いらしい。
しばらくぶりで見舞いに来た久美さんは、「体調が悪かったなんて嘘。お父さんの顔を見るのが辛くて…。一日でも長く生きてほしいと思ったはずなのに..」と本音をこぼす。
医師の広野(松山ケンイチ)が「その時の気持ちでいいと思います」と優しい言葉をかけると、ちょっと安心した様子だったのだが・・・。
ガンの痛みに苦しむ福山さん
福山ハルさん(樫山文枝)はがん性疼痛で辛い毎日を送っている。息子が一人いるというがほとんど見舞いに訪れない。
最近はガンが脳転移して会話もままならないが、「私が生きていることくらいしか、あの子の役に立てない」と意味深な言葉をつぶやく。
連絡を受けてやってきた息子(平原テツ)はいわゆるニートで、母の年金で生活しているという。そんな状況で最後に母にしてあげられることは・・・。
命と向き合う看護師の赤根さん
先輩看護師の赤根さん(内田慈)が、「ステージ3の下咽頭がん」と診断された。
普段は気丈な赤根もさすがに不安を隠せず、入院中の大戸屋さん(きたろう)からも「生きろ」と励まされる始末だ。
私大に合格した一人息子の貴之(丈太郎)は、大学には行かず母さんの看病をするといって譲らないが、「大学へ行きなさい!私の夢を奪わないで!」と涙ながらに訴える母がいて・・・。
「お別れホスピタル」をもう一度見る方法
お別れホスピタルを見逃してしまった、もう一度じっくり見たいという方は、NHKオンデマンドで視聴可能です。
料金は、単品なら220円(税込)、まるごと見放題パックなら980円(税込)ならかかりますが、
U-NEXT経由でもらえる「1000円分のポイント」を利用すれば、実質無料で見ることができます。
ポイント利用例
①220円×4=880円分利用して、「お別れホスピタル全4話」を見る
②980円のまるごと見放題パックを利用して、「お別れホスピタル」+他のNHK作品、さらには、U-NEXTで配信している見放題作品全てを1ヵ月間無料で見る
最後に
死をいう重いテーマであるはずの「お別れホスピタル」。人が亡くなるのだから明るい話ではないにしろ、私は重く苦しいドラマだとは思えません。
原作者の沖田×華さんも「死を描くことは生きることにつながる」と言っているように、人は最後の最後まで希望という一筋のあかりを頼りに生きていくのでしょう。
希望といっても大それたものじゃなくて、美味しいお菓子が食べたい、好きな人の側にいたい、桜の花を見たいといった欲求こそが命をつなげているのだと思うのです。
療養病棟は悲しい場所ではなく、むしろ人生最後の舞台に拍手喝采を送る場所。
おそらくきれいごとでは済まないけれど、終末期に家族ができることは毎日小さな希望の種を渡しつつ、しっかりと最後を見届けてあげることではないでしょうか。